<社説>F35飛来計画 「負担軽減」が空虚に響く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 これでは「負担軽減」の掛け声は空虚に響くだけだ。住民被害が深刻化することを危惧する。

 米海兵隊の6カ月ごとの部隊展開計画(UDP)に伴い、米本土からF35戦闘機の日本への飛来が計画されている。嘉手納基地などに飛来する可能性が高い。
 開発途上のF35は米空軍や海軍も導入を計画している。海兵隊仕様のF35Bは垂直離着陸ができるタイプだ。2017年に山口県の岩国基地に配備される予定だが、既に嘉手納への格納庫整備や伊江島などでの訓練の計画が明らかになっている。
 米軍が米議会に提出した計画書によると、嘉手納の専用格納庫は「UDPに関連したF35の配備、運用支援」が目的とされている。岩国配備機と同様に、本国から来るF35機も嘉手納を使用するとみるのが自然だろう。
 だがF35飛来の恒常化とそれに伴う訓練激化で、嘉手納基地周辺の負担がさらに増すことは必至だ。飛来は決して容認できない。
 F35はジェット戦闘機の中でも騒音が大きいとされており、米本国でも配備への反対運動が起きた。先行配備されたフロリダ州では、基地周辺の住民が米軍を提訴する事態に発展している。
 空軍もF35の嘉手納配備を検討しているが、一連の配備や飛来の計画を日本政府は承知していないのか。もし知っていて黙っているとすれば言語道断だが、知らないのなら即座に米側に確認し、計画の中止を申し入れるべきだ。
 嘉手納の米軍機騒音では第3次爆音訴訟が進行中だ。過去の判決がその違法性を認めたように、住民の我慢は限界を超えている。
 これ以上の負担が許されるはずがないが、今月中旬には訓練などの名目で米国の州兵空軍のF16戦闘機までが嘉手納に暫定配備された。静かな夜や平穏な生活を求める住民の最低限の要望を踏みにじるものだ。訓練なら自国でやればよい。日本政府はなぜ米国に抗議し、本国帰還を求めないのか。
 日米は10年5月に訓練の県外移転を拡充して嘉手納の騒音を軽減することで合意したが、その後F22戦闘機など外来機の騒音被害は拡大し、負担はむしろ増したと言わざるを得ない。
 米国の都合で基地機能がなし崩し的に強化されることを放置してはならない。日本政府は毅然(きぜん)とした態度で負担軽減合意の内実を米側に問いたださねばなるまい。