<社説>国会包囲行動 全国で辺野古考える契機に


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 辺野古の作業強行に抗議する多くの人々が国会前に集まった。敬意を表するとともに、全国にその輪が広がることを願いたい。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対し、沖縄の海を表す青色を身に着けて国会を包囲する「人間の鎖」行動が国会周辺で行われた。約7千人(主催者発表)が手をつないで国会を囲み「沖縄の民意を無視するな」と訴えた。
 辺野古では作業に抗議する人たちが連日声を上げているが、多くの県民が同様に政府に憤っている。辺野古や県庁周辺で開かれた大規模集会をはじめ、知事選や衆院選などでの結果がそのことをよく表している。
 その民意と連帯し、国会前に多くの国民が結集したことは大変意義深いことだ。沖縄にとって勇気づけられることでもある。
 包囲行動の呼び掛け人の一人、フリーライターの鎌田慧(さとし)さんは安倍政権の作業強行に関し「ヤマトンチュが沖縄の人たちの心を踏みにじっていることに気付き、本土側も具体的に行動していかなければならない」と述べ、運動を全国に広げていく契機にしたいと話している。ぜひそう期待したい。
 辺野古は沖縄だけの問題ではない。国防や安全保障の重要課題であると同時に、国と地方の関係、民主主義の在り方、そして現在の安倍政権との向き合い方を考える上で優れて普遍的な問題だ。
 移設計画について安倍晋三首相は「法治国家として関係法令にのっとり、既に判断が示された」と述べ、前知事の埋め立て承認を根拠に作業強行を正当化するが、前知事の判断は選挙で否定された。
 安倍政権は沖縄の声に目を背けるべきではない。民主主義の原点である選挙結果さえ無視し、市民運動を抑え込むような前近代的な対応では、日本は「法治」でなく警察国家としかいえなくなる。
 辺野古が「唯一の解決策」という誤りも、いい加減正すべきだ。例えば米国の知日派重鎮ジョセフ・ナイ氏は中国のミサイル技術発達を踏まえ、沖縄への基地集中の再考を求めた。代替案の検討を促す日米専門家の意見になぜ耳を傾けないのか。
 基地が過度に集中する沖縄で、美しい海を埋め立てて新たな基地を造ろうとするのはどう見ても不正義であり、軍事的にも疑問だらけだ。多くの国民が辺野古の現状を正しく理解し、わが問題として受け止めて行動してほしい。