<社説>辺野古検証委設置 議論加速し理論武装急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場移設に関する辺野古埋め立て承認を有識者が検証する第三者委員会を翁長雄志知事が設置した。取り消しや撤回を視野に入れ、前知事の承認に法的な瑕疵(かし)がなかったかを検証してもらう。翁長知事は検証結果の報告時期について「4月から6月ぐらい」とし、「一日も早い検証、判断をお願いしたい」と求めている。現場海域では大型船による大規模な作業が始まった。検証を急ぐ必要がある。

 委員会は法律分野で弁護士3人、環境分野で識者1人の就任が確定した。環境分野で残り2人を選任し、6人で作業する。全ての委員が確定していないのは、複数の環境専門家に打診したものの、了解を得ることができなかったからだ。環境問題で研究を重ねてきた専門家は県の検証作業に協力し、自らの学問の蓄積を生かしてほしい。
 検証作業は「環境保全への十分な配慮」や「国土利用上、適正で合理的」との基準に適合していたかどうかが焦点となりそうだ。承認前に県環境生活部は環境保全措置について「懸念が払拭(ふっしょく)できない」として48件の意見を出している。こうした意見を踏まえて、当時の知事がなぜ承認という判断に至ったかについて詳細に分析してほしい。
 検証作業は委員だけが汗を流すべきものではない。翁長県政の下で働く県職員も同じ方向性で仕事をする必要がある。当時、承認作業に携わった担当者は全面的に検証作業に協力する責務がある。
 県は国に対して検証作業中は辺野古の作業を中断するよう求めている。しかし委員会設置の翌日から大型の起重機船を投入し、トンブロックを海底に落とす作業を始めた。菅義偉官房長官は「着実に進める」と述べ、県の意向を無視する考えを示した。言語道断だ。前知事の承認をもって「法治国家として関係法令に基づいて既に判断がされた」との認識を示したが、移設反対の知事が誕生したという沖縄の民意をどう思っているのか。検証中の作業中断は当然だ。
 第三者委員会は2月上旬に初会合を開き、月2回程度の会合を重ねて検証を重ねるようだ。移設作業は加速している。もっと開催頻度を多くするなど検証作業も加速するべきではないか。埋め立て着手などで手遅れにならない前に、取り消しや撤回を視野にした理論武装を急ぐ必要がある。