<社説>辺野古作業強行 民意踏みにじる蛮行だ


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 沖縄の民意を踏みにじる許しがたい蛮行だ。国策に異を唱える県民、国民を足蹴(あしげ)にするような安倍政権の専横がここまでまかり通るとは信じられない事態だ。

 政府は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向け、浮具(フロート)を固定するためのトンブロックを海中に投入した。それも翁長雄志知事が海上作業の中止を要請した翌日の作業強行である。
 翁長知事の要請は、前県政による辺野古埋め立て承認を検証する第三者委員会が結論を出すまでの間は辺野古での作業を見合わせるよう求めたにすぎない。「辺野古移設ノー」の民意を受けて生まれた翁長県政の当然の要請である。
 それすらも聞き入れずに作業を強行する政府の横暴にがくぜんとする。しかも、県はトンブロック投入が新たな岩礁破壊に当たる可能性があるとして、沖縄防衛局に問い合わせていたという。自然破壊を懸念する県の照会すら無視し、自らの方針を押し通した。これほど沖縄の民意に挑戦的だった政権は過去になかったであろう。
 27日の衆院本会議で普天間問題について問われた安倍晋三首相は「地元の理解を得ながら普天間の一日も早い返還に向け、安全に留意しながら着実に移設を進めていく」と答弁した。
 安倍首相の発言と実際の行動は言行不一致そのものだ。翁長知事の要請に反した作業強行は「地元の理解」を得る考えなど持ち合わせていないことの表れである。「安全に留意」とも言うが、辺野古沖では海上保安官による暴力行為が横行しているではないか。
 安倍首相は「負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えていない」とも述べた。いったい安倍政権のどこが民主的なのだろうか。今沖縄で起きていることは国策への従順を県民に押し付け、反対者を排除する非民主的行為そのものである。
 思い起こしてほしい。2013年1月28日、県民代表はオスプレイの配備撤回と普天間県内移設断念を求める「建白書」を安倍首相に手渡した。その末尾には「国民主権国家日本のあり方が問われている」とある。
 建白書は辺野古移設反対を求める「オール沖縄」の原点である。民主主義を掲げるのなら、安倍首相は建白書に込めた沖縄の民意を黙殺することなく、辺野古での作業を即刻中止すべきだ。