<社説>辺野古環境監視委 防衛局は指摘尊重すべきだ


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事に伴う環境保全策を検討し、沖縄防衛局に指導・助言する。この環境監視等検討委員会の設置目的は、根底から崩れたと言わざるを得ない。

 委員会の議論の中で、複数の委員が「調査計画の妥当性を判断するのも、結果の評価を判断するのもこの委員会が行うと、審査側と評価側が同じになり問題ではないか」などと、委員会の客観性確保を疑問視していたことが明らかになった。
 審査と評価を同じ機関で行うことは著しく客観性を欠く。当然の意見である。自ら設置した委員会の委員の指摘を防衛局は重く受け止め、尊重する必要がある。
 にもかかわらず、客観性を確保する第三者機関設置を求める意見を防衛局が無視していたことも分かった。指導・助言を受ける立場にあることを忘れてはいないか。
 環境問題の専門家の助言から新基地建設に都合のいいものだけを防衛局が取り入れるのならば、委員会設置に何ら意味はない。そうでないならば、これまでの委員会の議論に加え、今後の委員会を全て公開すべきである。
 2014年9月の台風19号では重さ160キロの鋼板アンカー(いかり)など248個のアンカーのうち120個が流され、見つかっていないことも委員会で報告されていた。大型ハマサンゴが傷つき、ジュゴンの海草藻場が荒らされたことと無関係ではあるまい。
 申請を取り下げたが、美謝川切り替えでは環境負荷がより大きい地下水路の長い方の案を防衛局が採用していたことも分かった。
 防衛局は県の質問に対して「環境に配慮している」と回答してきた。配慮の結果がアンカー喪失であり、環境負荷軽減よりも早期完工優先である。これでは、防衛局に環境保全を語る資格はない。
 大浦湾一帯は生物多様性条約に基づく環境省の重要海域に選定され、県の自然環境保全指針でも厳正な保護が求められる最高レベル「ランク1」に位置付けられている。環境問題に詳しい委員ならば、この自然の大切さは分かるはずである。
 事務局を務める防衛局主導の議論になってはならない。防衛局の環境保全策の問題点を多くの委員に厳しく指摘してもらいたい。掛け替えのない自然を破壊する新基地建設に、結果として協力することは避けてほしい。