<社説>着陸帯先行提供 運用と建設を中止すべきだ


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 東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設計画で、日米両政府は東村の高江集落に最も近いN4地区の着陸帯2カ所を米側に先行提供することで合意した。

 翁長雄志知事は垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に反対しており、同機が使用する着陸帯建設にも反対を表明して選挙で当選した。沖縄の意向に背く形で先行提供することなど許されない。
 米軍の運用は2月上旬の閣議決定を得れば可能となる。北部訓練場の返還前に提供されるため、既存の着陸帯も継続使用でき、結果として着陸帯が2カ所増えた状態となる。これでは基地機能強化ではないか。さらにN4地区の着陸帯は先月21日と昨年3月、未提供にもかかわらず米軍ヘリが訓練で使用している。取り決めを無視する組織に提供すれば、無謀な訓練が横行すると考えるのが自然だ。
 高江などやんばるの森では2012年10月の配備以降、オスプレイが日常的に低空飛行している。高江小中学校などでは昨年、校舎の窓ガラスにぶつかったとみられる国の特別天然記念物ノグチゲラの死骸が4羽見つかっている。
 これまでこうした死骸は見られたことがなく、成育環境に大きな変化が生じている可能性がある。オスプレイの飛行と無縁だとは言い切れない。着陸帯の運用は住民被害だけでなく、やんばるの生態系にも大きな影響を及ぼすことも見逃してはならない。
 沖縄防衛局は2カ所以外にも着陸帯4カ所を新たに建設する予定だ。うちN1地区では準絶滅危惧種のチョウであるリュウキュウウラナミジャノメ、リュウキュウウラボシシジミ、イシカワシジミの3種も確認されている。オスプレイの排気は高温で、未舗装の着陸帯では火災を引き起こす可能性も指摘されている。ヘリモードで低空飛行すれば、森に生息するこうした生物に影響が出ないはずがない。
 これらの着陸帯は主に普天間基地に駐留する海兵隊のヘリが訓練で使用するものだ。普天間を名護市辺野古ではなく、沖縄以外に移設すれば不要となる。知事、名護市長、沖縄4選挙区から当選した衆院議員全員が辺野古移設に反対している。辺野古を取りやめ、県外・国外に移設し、着陸帯も運用と建設を中止するのが筋だ。