<社説>辺野古検証委 作業阻止へあらゆる手段を


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 辺野古埋め立て承認の検証委員会が始動した。翁長雄志知事は検証作業と並行して、辺野古の海上作業を止めるためのあらゆる手段を早急に検討すべきであろう。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画で、前知事の埋め立て承認を検証する県の「第三者委員会」が初会合を開いた。6人の有識者が承認に法的な瑕疵(かし)がなかったかを検証する。
 検証の取りまとめは6月となり、7月上旬をめどに県に報告する。「早ければ4月」としていた知事の説明から、数カ月遅れた。
 委員長の大城浩弁護士は報告に関し「それなりの質を求められている。中身を薄くするわけにはいかない」と述べ、十分に時間をかける必要性に理解を求めた。だが率直にいって「7月では遅くないか」と感じた人も多いだろう。
 委員らは8千ページもの政府の埋め立て申請書をはじめ県議会の百条委員会審議、承認取り消し訴訟など膨大な資料を今後調査する。国に提訴される事態も想定した十分な理論構成が求められよう。
 時間を要することは理解できるが、一方では民意を無視して安倍政権が移設に向けた作業を進めている。抗議する市民と警備当局の衝突でけが人も相次ぐ。可能な限り検証作業を急いでもらいたい。
 検証では環境保全面がまず論点となろう。承認直前まで県が自ら「懸念は払拭(ふっしょく)できない」と報告した通り、絶滅危惧種ジュゴンやウミガメ、貴重なサンゴ・海草などの生態系への影響や、埋め立て土砂搬入に伴う外来生物被害などの懸念は消えないままだ。
 埋め立て自体の必要性、知事の裁量権もポイントだ。中国のミサイル射程内にある沖縄での海兵隊基地移設を軍事専門家も疑問視する中、豊かな海を埋め立てる事業に公益性はない。承認判断の本質をつまびらかにしてほしい。
 県は検証中の海上作業中断を求めたが、安倍政権はこれを拒んだ。再三の選挙で示された民意を踏みにじり、最低限の要望さえ無視して事業を強行する前近代的な対応は、国際的にも本当に恥ずかしい行為である。
 移設の既成事実化を図る狙いがあろうが、県の検証作業について専門家は「まずは承認を撤回し、その後に法的瑕疵を検証すればよい」とも指摘している。知事に検証を悠長に待つ余裕はないはずだ。県庁内や外部の知恵を結集し、次の一手へ今こそ総力を注ぐべきだ。