<社説>2015年度県予算案 知事公約実現に全力を


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 県の2015年度一般会計当初予算案が過去最高の総額7465億円に決まった。前年度比226億円(3・1%)増で、増額は7年連続、過去最高額の更新は4年連続である。

 翁長雄志知事の公約である基地問題解決や子育て支援の拡充、産業振興に向けて目配りが行き届いた予算といえよう。問題はどう効率的に運用し、実効性を高めるかである。それ抜きには知事公約の実現は成し得ない。全力を挙げて取り組んでもらいたい。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設阻止に向け、米ワシントン駐在員設置経費と知事訪米費を計上した。
 駐在員は県民の声を米政府、議会に伝えるだけでなく、知事訪米が効果を発揮するように、事前の情報収集や分析に当たる。
 辺野古移設を強行し、新基地建設の既成事実化を図る日本政府が知事訪米で米政府高官との面談に協力することは期待できない。それだけに駐在員の果たす役割は大きい。
 駐在員配置によって、米政府や関係者への働き掛けは格段に増えよう。米政府に沖縄の民意を伝え続けることで、公約実現につながることを期待したい。
 ひとり親世帯や共働き世帯にとって認可保育園の待機児童解消は切実な願いである。その意味で、待機児童対策に過去最大規模の79億4千万円を計上したことは心強い。
 3年間で「潜在」を含めた待機児童1万8千人余分の保育環境を整えるが、1年目は5494人分の受け皿を確保する。仕事と子育てを両立できる環境づくりを重視する姿勢を評価したい。
 子ども医療費助成費を約12億8千万円に増額し、通院の支援対象をこれまでの「3歳以下」から「就学前」に広げたことは大きな前進だ。ただ全国は「中学卒業まで」の自治体が最も多い。対象拡大を今後の課題にしてほしい。
 現状は沖縄の地理的優位性を生かし切っているとは言い難い。アジア経済戦略構想策定に向けた調査費計上は沖縄の持つ可能性を具現化し、アジア市場を取り込んだ自立型経済への一歩と捉えたい。
 収支不足は過去5年で最大の244億円に上った。基金を取り崩して編成した予算案であり、財政健全化に向けた取り組みも忘れてはならない。