<社説>大浦湾サンゴ破壊 ブロック投下は許されない


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設で沖縄防衛局の設置したコンクリートブロックが名護市の大浦湾の複数箇所でサンゴを傷つけていたことが分かった。現場海域は絶滅危惧種のジュゴンやウミガメが回遊し、生活の場としている。大浦湾の貴重な生態系をこれ以上破壊することは許されない。

 コンクリートブロックは立ち入り禁止区域などを示すための浮具(フロート)や浮標灯(ブイ)を固定するためのものだ。沖縄防衛局は県の漁業調整規則の許可は必要ないとの立場を取っている。協議や許可が必要のない「船舶等の投錨(とうびょう)」と認識しているのだろうか。
 しかし海に投下されている「いかり(アンカー)」は10~45トンのコンクリート製ブロックと480~870キロの鋼製の2種類だ。しかも75カ所に設置される。あまりに巨大で、投下数も多い。いかりの規模を超えている。
 県漁業調整規則では漁場内でサンゴなどの岩礁を破壊する者は知事の許可が必要だと定めている。その理由について県は許可取扱方針で「本県水産業は、これらサンゴ礁などが持つ大きな生産力をよりどころとしており(中略)多くの有用な魚介類が生育する重要な場所」だからだとしている。
 実際に防衛局の設置したコンクリートブロックが随所でサンゴを破壊している。つまり県に許可が必要な岩礁破砕を引き起こしているのだ。実害が出ているのに、防衛局は県が昨年、「フロートを固定するアンカーの設置について許可は不要とした」と判断したことを挙げ、県との協議にも応じようとしていない。自分たちに都合の良い解釈だけで物事を進めている。極めて不誠実だ。
 県は1月16日、ブロックの設置が岩礁破砕の協議が必要かを判断するための質問状を、30日の回答期限を付けて防衛局に送っている。しかし防衛局は回答する前の27日にブロック投下に踏み切っている。
 さらに県は防衛局が30日に送付した回答に対して再質問を出している。防衛局は回答を出さぬまま、ブロック投下を続けている。県の協議、許可の権限を奪っており、順法精神のかけらもない。
 防衛局は県の再質問に速やかに回答すべきだ。そして少なくとも県が協議、許可の必要の有無の判断を出すまでは一切の作業を中止しなければならない。