<社説>アジア戦略構想 21世紀の「商社」目指そう


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 沖縄経済の未来を占う「県アジア経済戦略構想」を策定する委員会が始動した。

 沖縄21世紀ビジョンの基本・実施計画を踏まえた上で、実践に向けた戦略を練る。アジアの活力を取り込む産業やビジネスをどのようにして創出するか。委員会の論議に注目が集まる。
 アジアは2013年から17年の5年間に平均7・5%の成長が見込まれる。人口は11年から約22%増加し、50年には約51億人になると予想されている。他の地域と比べて若年人口が多く、労働人口が豊富だ。巨大な消費市場でもある。1人当たり消費の伸び率(5年間予想の平均)は、先進各国・地域を上回り今後も拡大が予想されている。
 アジア経済戦略構想を策定する作業部会は(1)貿易・海外ネットワーク、物流、製造業、農林水産(2)観光、地域・アジア経済(3)情報産業、国際的人材育成、環境・エネルギー-の3部で構成する。
 委員長に就任した富川盛武沖国大教授は「沖縄に一番必要なのは商社的機能」だと指摘する。沖縄の物だけを出すのではなく、国内の商品を最終便で持ってきて、朝一便でアジアへ出すというようなイメージだ。21世紀の「商社」を目指したい。そのために物流、観光、情報通信など全ての分野で拠点(ハブ)機能を整備し活用する必要がある。
 第1に物流については、那覇空港をハブに日本とアジア各地を結ぶ国際航空貨物事業や、那覇、浦添など5市を指定した国際物流拠点産業集積地域(国際物流特区)を生かした新たな施策の展開をどうするかが問われる。海については、台湾のハブ港である高雄を拠点に国際航路の開設が進みつつある。航空と海上輸送を連携させた「シー・アンド・エアー」を実現させたい。
 第2に観光については、アジアの中で世界的なハブであるシンガポールのチャンギ空港との相互連携の深化が必要だ。
 第3に情報通信については、秋にもアジア-沖縄-東京をつなぐ国際海底光ケーブルの供用が始まる。アジアの情報通信ハブとして、県内IT産業の優位性が高まる。この情報インフラをどう生かすかが鍵を握る。
 アジアに進出するために、国際的な人脈づくり、人材育成も求められている。沖縄の持つ可能性を引き出し、開花させるような戦略構想が描かれることを期待する。