<社説>ウクライナ停戦 不退転の決意で履行せよ


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 2度目の停戦合意を必ず実現する不退転の決意が必要だ。

 ウクライナ東部での政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘激化をめぐり、ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの4カ国首脳が15日からの停戦で合意し、発効した。
 ロシアと欧州双方の権益が衝突するウクライナでの紛争は約5500人の犠牲者を出し、世界の重大な懸念材料になっている。12日の停戦合意後も続いた戦闘で約30人が死亡しており、発効した停戦が守られるか情勢は緊迫している。
 昨年9月に合意された停戦はすぐに崩れただけに今度こそ実現せねばならない。4カ国は永続的な和平を築く責務を果たしてほしい。
 独のメルケル首相、仏のオランド大統領、ロのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領が16時間に及んだ徹夜の交渉で停戦合意にこぎ着けた。当事者以外の独仏が主導し、首脳が膝を突き合わせた議論の末に道筋を付けたことに意義がある。
 共同声明はウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、ウクライナ東部の自治権拡大にも言及した。合意文書には、重火器の前線からの撤退、親ロ派支配地域の自治権拡大とそれに向けた地方選挙実施や年末までのウクライナ憲法の改正などが盛り込まれた。
 前回の合意にも盛り込まれたが、実現しなかったため、今回は明確な期限を付けた。一方で、焦点だった停戦ラインの確定は先送りされており、不安要素も残している。
 停戦実現に向けた第一の責任を果たすべきはロシアだ。ロシア軍の東部地域への展開と武器供与は国際社会から厳しく批判されてきたが、一向に改善されないまま、戦闘が激化した。それを繰り返すことは許されない。プーチン大統領は指導力を発揮し、これまでの強硬姿勢を軟化させる責務がある。
 ロシアが合意履行に誠意を示さないなら、欧米による経済制裁の強化や米政府が検討しているウクライナ政府軍への武器供与が現実のものとなりかねない。米ロの代理戦争が現実味を帯びる最悪の展開となる。
 一方、ウクライナ政府も武力による制圧によって東部の親ロ派住民に高まっていた不安を解消する努力を払うべきだ。
 これ以上犠牲者を出さないため、全ての当事者が自制心を働かせ、国際社会は監視体制を一層強めねばならない。