<社説>与那国住民投票 島の将来見据えた選択を


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 陸上自衛隊配備の是非を問う与那国町住民投票の期日前投票がきょう18日から始まる。

 望ましい島の在り方に住民が意思を示す大切な機会である。島の将来は有権者一人一人に託されている。自衛隊配備が島の発展につながるのかどうかを真剣に考え、票を投じてほしい。
 人口が増える自治体は税収も増え、消費も拡大し、街に活気がみなぎる。人口が減る自治体は高齢化が進み、社会資本の整備や後継者育成などに支障を来す。地域の活力は人口に比例するといっていい。
 与那国町の人口は1950年に6千人余だったが、2014年には1513人に減少している。それに伴い、産業も低迷しているのが現状だ。町にとって、かつての活力を取り戻すため人口減少に歯止めをかけることは大きな課題である。
 陸上自衛隊から05年に配備が打診され、町議会は08年に自衛隊誘致決議を可決した。以来、自衛隊配備問題で町が二分されてきた。
 そのため、官民挙げて地域づくりに取り組む力がそがれた感は否めない。その一方で、町づくりについて住民一人一人が考え、議論する契機にもなった。
 「自衛隊に賛成する会」は配備によって人口減少に歯止めがかかり、学校統廃合を避けられる可能性があると主張。防衛関連予算による高額補助でごみ焼却施設などが整備されるとしている。
 配備に反対する「住民投票を成功させるための実行委員会」は自衛隊は島を豊かにせず、自衛隊頼りの島となり、本来の自治が失われると批判。周辺国との緊張を高めるなどと訴えている。
 有権者は双方の主張をしっかり吟味してほしい。将来を見据えた選択を望みたい。
 町が05年に策定した「与那国・自立へのビジョン」は「自分たちのことは自分たちで決定」することをうたう。住民投票は自己決定権を行使し、島の将来への責任を果たす好機であることをあらためて確認したい。
 住民投票結果に法的拘束力はないが、民主主義国家ならば示された民意を尊重しなければならない。だが中谷元・防衛相は自衛隊配備作業を「予定通り進めたい」と述べ、住民投票結果を無視する姿勢を示している。町議会が可決し、町長が実施を決めた住民投票を軽々しく扱う言動は決して許されない。