<社説>戦後70年談話 真摯に語らねば伝わらない


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 安倍晋三首相がことし夏に発表する戦後70年談話に関する有識者懇談会の初会合が開かれた。

 焦点は、戦後50年の村山富市首相談話が明記し、戦後60年に小泉純一郎首相談話も引き継いだ「植民地支配と侵略への反省」をどこまで継承するかだ。
 初会合で安倍首相は「未来への土台は過去と断絶したものではあり得ない」と述べた。そうであるなら過去の国策の誤りを認め、真摯(しんし)に反省することこそ肝要ではないか。
 これまで安倍首相は村山談話や小泉談話を「全体として引き継ぐ」としてきた。一方で「侵略」「植民地支配」などの重要なキーワードをそのまま談話に盛り込むことには慎重だ。積極的平和主義など今後の国際貢献への決意を前面に出した「未来志向」を追求したい意向だ。
 そもそも安倍首相は村山談話を疑問視しており、2013年4月の参院予算委員会では「『侵略』という定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と指摘した。13年12月にはA級戦犯を合祀(ごうし)する靖国神社に参拝した。
 中国、韓国は安倍首相の歴史認識に疑念を抱いている。両国と日本の関係がぎくしゃくしたままで、いくら未来志向に重点を置いた談話を出したところで、その真意が伝わるだろうか。過去の過ちに真摯に言及しないまま、積極的平和主義を説かれても関係改善などおぼつかない。
 安倍首相による戦後70年談話は中韓はじめ、米国からも注目されている。どちらも村山談話や小泉談話から後退しないことを望んでいる。
 有識者懇談会は法的な位置付けがなく、組織での議論が談話にどう反映されるかは曖昧だ。しかし、談話は国際的な注目を集めていることを認識し、懇談会メンバーは大局的な歴史観をもって、歴史に堪え得る議論を繰り広げてもらいたい。
 安倍首相も談話づくりに際し、懇談会をアリバイづくりにしてはならない。
 戦後、日本の平和主義に基づく国際貢献は国際的に評価は高い。その出発点が、誤った国策を反省し、戦争の犠牲を強いた国々への謝罪であったはずだ。
 それを盛り込むことに何の支障があると言うのか。一内閣の談話にとどまらず、戦後70年談話は国の将来を左右する重要なものだと、安倍首相は認識すべきだ。