<社説>サンゴ破壊確認 「一方的」なのは誰か


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 県水産課が名護市辺野古の大浦湾で実施した潜水調査で、沖縄防衛局がコンクリートブロックを設置した場所でのサンゴ礁破壊を確認した。これに対して菅義偉官房長官は「一方的に現況調査を開始したことは極めて遺憾だ」と述べ、県を批判した。

 中谷元・防衛大臣も防衛局が県に求めた調査の照会に回答がなかったことを挙げて「甚だ遺憾だ」と県に疑問を差し挟んだ。
 県の調査が果たして「一方的」と批判を受けるいわれがあるのか。そもそも政府は辺野古埋め立て承認についての検証結果が出るまで海上作業を中断するよう求めた県の要求を無視している。一方的なのは政府の方だ。
 また防衛相は県が防衛局の照会に回答しないと批判するが、防衛局は県が求めたブロック位置の図面などの資料を期限内に提出していない。さらに県が米軍側への制限水域内立ち入り許可申請を仲介するよう打診しても、直接米軍と調整するようにと突き放した。翁長雄志知事が「誠実とは思えず遺憾だ」と言ったように、政府こそ不誠実な対応ではないか。
 今回の調査でサンゴ礁の破壊が確認されたブロックは岩礁破砕許可の区域外に設置されている。防衛局はブロック設置について「アンカー(錨(いかり))の設置については県から許可申請は不要だと説明を受けた」と正当性を主張する。
 県漁業調整規則に基づく岩礁破砕の取り扱い方針は船舶の投錨(とうびょう)を許可不要としている。しかしコンクリートブロックと同規模の重量となる消波ブロックの設置は「許可が必要な行為」と定めている。県水産課もコンクリートブロックは許可不要の船舶の投錨に該当しないとの判断を示している。
 どう考えてもブロックは許可が必要と解釈するのが妥当だ。しかも国は岩礁破砕許可区域外でサンゴ礁という岩礁を破壊している。取り扱い方針に反しているとしか思えない。自分たちに都合のいい解釈を国が繰り返しても通るはずはない。
 県が調査結果を精査した上で取り扱い方針に反していると判断すれば、防衛局の許可を取り消すことになる。取り消されればボーリング調査も実施できない。県が調査結果を踏まえた結論を出したら、国は直ちに方針に従うべきだ。許可が取り消されたら、作業強行は許されない。