<社説>言葉のセクハラ 判決を根絶の道しるべに


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 働く人を不快な思いにさせる言葉によるセクハラは許されない。企業が厳しい態度で臨むことを後押しする最高裁の判決が下された。

 言葉のセクハラに対し、雇用する側が毅然(きぜん)とした態度で臨み、重い処分を科せるようになる。判決をセクハラ防止の道しるべとし、何がセクハラに当たるのかを厳しく見極め、全ての職場で防止策に生かしたい。
 女性従業員にセクハラ発言を繰り返していた男性管理職2人に下された処分が重過ぎるかが問われた訴訟で、最高裁は「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与え、職務環境を害した」と認定し、処分を妥当とする判決を下した。
 大阪の水族館運営会社の40代の課長代理だった2人は部下の20代、30代の女性派遣社員ら2人に1年以上、結婚や収入への言及を伴う性的な発言を繰り返した。
 「結婚もせんで、こんな所で何してん。親泣くで」「俺の性欲は年々増す」「夜の仕事とかせえへんの。収入いいで」。認定された発言はセクハラそのものだ。
 会社は2人を30日間と10日間の出勤停止処分とし、係長に降格させた。体に触れるセクハラより言葉によるセクハラは軽視されがちで、処分に二の足を踏むきらいもあるが、最高裁はそれを戒めた。
 判決は「被害者は職場の人間関係の悪化を懸念して抗議や会社への申告を控えるケースが少なくない」と指摘した。発言を拒絶しなかったから、許されると思った-。セクハラの加害者側がよく持ち出す言い訳をぴしゃりとはねつけたのだ。その意義は大きく、被害が潜在化する要因を改めるきっかけとしたい。
 被害者の明確な拒否がなかったことと会社が処分前に警告していなかったことを重視した二審の大阪高裁は処分を取り消したが、周囲が把握しにくい密室で横行する傾向があるセクハラの実態から目を背けたと指摘せざるを得ない。
 被害者の心痛を重んじ、セクハラ防止に努力すべき管理職の責任を重くみた最高裁の判断は妥当である。
 全国の労働局に寄せられるセクハラ相談は後を絶たない。最近は女性から男性、同性間のセクハラも報告され、多様化している。
 言葉のセクハラも人間の尊厳を傷つける悪質な行為だ。職場の雰囲気や企業イメージを悪くする。判決を踏まえ、社会全体でセクハラ根絶に向けた機運を高めたい。