<社説>良生君の手術成功 元気な姿での帰沖待ちたい


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 海の向こうからうれしい知らせが飛び込んできた。重い心臓病を患う松島良生(らい)君(13)が米ニューヨーク州のコロンビア大学病院で心臓移植手術を受け、成功した。

 「新しい心臓はトクントクンと動いています。『生きる』力強さを感じます。らいと一緒に大切に大切にしていきたいと思います」
 両親が寄せた感謝のメッセージには、臓器提供者(ドナー)とその家族、これまで支援した県民への深い感謝の意と希望がつづられている。
 移植手術に望みをつなぐ良生君と家族を支援しようと立ち上がった「らい君を救う会」の熱意あふれる活動に賛同し、多くの県民、企業・団体が募金に応じた。
 2011年に同じ病院で移植手術を受けた要美優(かなめみゆ)さん(17)に続き、苦境に立つ人を助け合う沖縄のユイマール精神が息づく県民を挙げた運動に広がっていただけに、手術成功を心から喜びたい。
 「移植医療は移植手術後から始まる」という言葉があるほど、心臓移植でも術後のケアが重要になる。拒絶反応を抑える免疫抑制剤の服用など、心臓機能の低下を防ぐ慎重な治療が続くだろう。
 本人と家族の新たな闘いを沖縄から温かく見守り、良生君が元気な姿で古里に戻る日を待ちたい。
 良生君は2013年12月、心臓の機能が急激に低下する急性心筋炎を患い、補助人工心臓を装着した。14年7月に心筋炎後心筋症と診断され、両親は完治に有効な心臓移植を望んだ。
 だが、国内で臓器移植を待てば3年はかかる。米国での移植を選択するしかなかった。「らい君を救う会」が9月から募金を呼び掛け、支援の輪が瞬く間に広がった。
 子の命を救いたいという切実な訴えに、親の心を重ねた県民も多かっただろう。募金は24日間で目標額の2億1500万円に達した。
 昨年12月に渡米した良生君は待ち望んでいたドナーが見つかり、11時間半に及ぶ手術が成功した。
 一方、美優さんと良生君の事例は臓器移植を必要とする病に対する医療の課題も照らし出す。10年7月の改正臓器移植法の施行により、15歳未満の臓器提供が可能になったが、国内のドナーは少ない。保険が適用されず、医療費が高額な国外で手術せざるを得ない実情がある。
 命の重さは平等である。医療環境を整えるには何ができるか。一人一人が考えたい課題である。