<社説>相次ぐ寄付金問題 「税金の還流」許されない


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 安倍晋三首相が代表を務める自民党支部が、国の補助金交付が決まっていた企業から政治資金規正法で禁じる1年以内の寄付を受け取っていたことが分かった。

 西川公也前農相の辞任後、望月義夫環境相、上川陽子法相と続き、さらには安倍首相、甘利明経済再生担当相、林芳正農相、民主党の岡田克也代表と、それぞれが代表を務める政党支部で国の補助金に絡む「政治とカネ」の問題が相次いで発覚した。
 たとえ政党支部であれ、その代表は政治家である。国の補助金を受けた企業から寄付を受け取ることは、税金が政治家に還流しているとみられても仕方ないだろう。
 仮に「違法ではない」にしても、国民感覚からすれば不適切のそしりを免れない。「知らなかった」「問題ない」では済まされない。
 国民が政治家に高い倫理観を求めていることを忘れてはいまいか。「税金の環流」は許されない。国民視線の厳しさに鈍感な政治家の感覚が厳しく問われている。安倍首相はそのことを深く自覚すべきだ。
 安倍首相は西川氏辞任の際に「任命責任は私にある」と明言していた。だが、何ら責任を取っていない。その後、同様な寄付を政党支部が受けていた閣僚の任命責任も併せて取る必要がある。
 西川氏は辞任で首相は居座るということでは責任の取り方として著しくバランスを欠く。自身の問題に対する責任も合わせれば、辞任に値する。国民の政治不信を高めた責任はそれだけ重いのである。
 政治資金規正法は抜け道の多いザル法だと言われ続けてきた。政治家側が補助金の交付決定を「知らなかった」と言えば刑事責任は問われず、交付決定から1年以上たてば寄付を受け取っても違法にならない。法が有効に機能しているとはとても言えない。抜本改正を急ぐべきだ。
 安倍首相は3日の衆院予算委員会で「政治資金の規制の在り方は各政党や政治団体の政治活動の自由と密接に結び付き、各党各会派において議論すべき問題だ」と述べている。
 政治活動の自由を規制してはならないことは言うまでもない。だが、今問われているのは「税金の還流」であり、「政治活動の自由」とは別問題だ。論点をすり替え、責任を逃れようとする意図がありはしないか。内閣の6人が国民から疑念を持たれる事態に安倍首相は真摯(しんし)に向き合うべきである。