防衛省がキャンプ・シュワブまたはキャンプ・ハンセンに陸上自衛隊一個連隊(600人規模)の常駐を計画していたことが分かった。シュワブも含む以上、辺野古新基地も対象となり得る。
今までなかった部隊を新たに常駐させるのだから、まさに軍事増強だ。政府は「沖縄の負担軽減のため」と繰り返すが、負担軽減が聞いてあきれる。
計画を記す防衛省の内部文書は2012年の作成で、政府は「民主党政権下のもの」と説明する。だが米軍基地の自衛隊との共同使用拡大は05年の在日米軍再編合意のころからの既定方針だ。当時、防衛庁(現防衛省)首脳は共同使用について「米軍基地の運用に日本側の意思を反映させるため」と説明していた。果たしてそうか。
今も政府は、環境汚染の疑いが生じて地元が立ち入り調査を求めても、拒否する米軍に唯々諾々と従う。犯罪容疑者の米兵が基地に逃げ込み、口裏合わせや証拠隠滅できる現状も追認する。そんな対米隷属の政府が突然、矜持(きょうじ)に目覚めるなどと考えられるだろうか。
米軍専用基地は国内の74%が沖縄に集中する。計画は、共同使用によってこれらを米軍専用から除外し、数字の上で沖縄の負担を軽く見せるのが狙いではないか。
陸自配備について政府は「現在は検討上にない」と述べる。だが政府の「今はない」は、「将来は必ずやる」という意味だ。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備など、それを証明する事例はきりがないほどある。
政府は「南西諸島有事のため」と言うかもしれない。だが有事にならない外交こそが県民の願いだ。百歩譲って意に反して有事になるとしても、その際必要なのは制空権・制海権であり、空自や海自の分野だ。計画は「南西有事」に名を借りた陸自の権益拡大であろう。
それは新基地そのものにもいえる。政府は対中国への備えであるかのごとく言うが、日本の中国との戦闘に付き合うつもりなど米国にはない。そもそも日米外務・防衛両閣僚の正式合意文書には、島嶼(とうしょ)防衛は米軍の役割でも日米双方で対処すべき分野でもなく、日本側が単独で対処する項目に入れている。
とすれば日米の軍の同居は沖縄のためではない。海外での米海兵隊の軍事行動に自衛隊が付き合うこと、つまり集団的自衛権行使の準備であろう。危険極まりない。