<社説>航空機整備施設 国の責任で建設支えよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県が那覇空港で計画している航空機整備施設の建設が大幅に遅れている。防衛省が建設に伴う基地機能の移転補償費を県に要求し、折り合いがつかないからだ。国土交通省も駐機場の移転補償費を県に求めている。

 納得しがたい話である。那覇空港は国管理空港だ。移転補償費の名目で国が多額の負担を県に求めるのは疑問だ。
 国管理空港である以上、本来は政府の空港整備勘定に計上すべきものだ。第2滑走路増設事業が沖縄振興予算に組み込まれていること自体おかしい。沖縄関連予算をその分削った上、移転補償費まで県に求めるのは筋違いも甚だしい。
 県が航空機整備施設の建設を決めたのは2013年10月である。建設には自衛隊の地対空誘導弾パトリオット配備地の活用が必要となる。県は昨年3月、工作物の撤去と土地造成を負担することで防衛省と合意した。その時点で補償費負担の話は出ていない。
 ところが昨年8月になり、防衛省は基地全体の移転費や新たな用地での整備費を含む補償費の負担を県に要求してきた。額は数十億円が見込まれ、事業そのものに深刻な影響を与える恐れがある。
 那覇空港は復帰によって米軍から日本に管理権が移った。そのとき沖縄が望んだのは那覇空港の民間専用化であった。しかし、自衛隊との軍民共用が今日まで続いてきた。自衛隊機の発着は那覇空港の過密度を押し上げている。
 面積的にも自衛隊用地の存在が空港整備を難しくしてきた。限られた用地の中でターミナルや駐機場などの関連施設を配置しなければならないからだ。民間専用であれば空港整備は苦労せずにすむ。
 それにもかかわらず多額の補償費を県に求める防衛省の姿勢は到底県民の理解を得られない。
 駐機場の移転補償費を県に求める国交省も同様だ。県の担当者は「駐機場は国交省が管理する空港の基本施設であり、県がその分まで移転補償を負担するのはつじつまが合わない」としている。当然の主張である。
 羽田、成田、福岡に次ぐ発着回数があり、過密化した空港を拡張するのは当然だ。那覇空港の施設整備は沖縄のためだけではなく、日本の航空事業全体の活性化につながる。防衛省、国交省は過大な補償費負担で県の事業を頓挫させてはならない。責任をもって整備施設建設を支えてほしい。