<社説>新報活動賞 貢献への強い意志に学ぶ


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 地域社会に貢献している人は輝きを放つ。琉球新報活動賞の贈呈式を見てそんな感を深くした。

 ヘリによる救急搬送を担うMESHサポートは年間250回、通算では860回も出動している。小濱正博理事長が表現した通り、「救えない命を救」っているのだ。地域での居住を保障することにもなる。心から敬意を表したい。
 珊瑚舎スコーレの夜間中学には戦中・戦後の混乱で学校に通えなかった方々も学ぶ。その方々は感謝しているであろうが、贈呈式で星野人史代表は逆に生徒への感謝の言葉を述べた。生徒から学ぼうとする姿勢は実に感動的だった。
 拓南商事は埋め立て処分していた廃車の素材から固形燃料を作る方法を開発した。古波津昇社長はゼロエミッション(排出ゼロ)に言及したが、まさにそれを体現する取り組みだ。沖縄は資源のない島嶼(とうしょ)県だけに一層意義深い。
 碧は、女性スタッフのみによる店舗運営が特徴の鉄板焼きステーキチェーンだ。女性が働きやすい職場をつくるという理念は企業内保育園の計画などが実証する。西里弘一社長は「世界を目指す」と明言した。飛躍に心から期待する。
 南条幸子さんは沖縄でバレエの種をまいた母・南條みよしさんの跡を継ぎ、46年も教え子を育て、創作バレエにも取り組んだ。何千もの曲の中から使える曲はわずかに一つ、という言葉が印象深い。芸術への情熱がうかがえる。
 宮良康正さんは若くして民謡日本一に輝き、奇跡の喉と称された。「好きな歌を歌い続けてきただけなのに光栄だ」と語ったが、その一筋の姿勢が次代を導くのだろう。祝賀会で教え子とともに歌声を披露する姿が印象的だった。
 本部カンナの会はまさにこの賞の理念である「一隅を守り、千里を照らす」を地でいく。南風原町本部で大城清吉さんが個人で植えたカンナが始まりだ。それが町全体、他の市町村にも広がった。大城さんは継続を誓ったが、ぜひお願いしたい。
 榕樹書林は多彩な出版を手掛けてきた。代表的なのは「冊封琉球使録集成」だ。武石和実社長が述べた通り、研究者も避けがちな古文書をなじみ深くしてくれた。その文化的貢献は大きい。出版業界の環境は厳しいが、続けてほしい。
 共通するのは地域社会への愛着、貢献への強い意志であろう。今後もぜひ後進を導いてほしい。