<社説>中国国防費 軍拡路線を放棄すべきだ


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 中国の習近平指導部が、軍拡路線を堅持する姿勢を鮮明にしている。深く憂慮せざるを得ない。

 中国政府は2015年度予算案の国防費に約8869億元(約17兆円)を計上した。日本の防衛関係費の3・4倍に達する。
 英国シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)によると、13~14年のオセアニアを含むアジア全体の国防費増加額のうち、中国が63・4%を占める。軍備拡張は突出している。
 さらに宇宙開発や研究開発費などは軍事費とは別項目で計上されているとの見方が強く、実際の中国の国防費は発表の1・5倍と指摘されている。周辺諸国・地域が懸念を深めるのは当然のことだ。
 中国は外国製空母を改修して12年に配備したのに続き、初の国産空母を建造中という。次世代戦闘機開発や弾道ミサイルの性能向上にも取り組んでいるとされる。
 東シナ海や南シナ海で日米に対抗することなどを念頭に戦力の近代化を急いでいるが、中国は国防費の詳細を公表していない。その不透明さが国際社会の不信に拍車をかけている。
 中国の国防費はこの四半世紀、ほぼ2桁の割合で伸びている。傅瑩報道官は「(他の)大国と比べて軍備は劣っている」「中国の国防は防御的なもので、今後も平和的発展の道を歩む」と強調した。
 中国政府は15年の国内総生産(GDP)の成長率目標を14年の7・5%から7・0%に引き下げた。経済が減速する中で国防費は10%増を維持しており、報道官の見解に説得力は乏しい。
 中国の国防費増大に対し、日本政府は警戒感を示した。菅義偉官房長官は「日米同盟強化にしっかりと取り組み、地域の平和と安定のために貢献する」とコメントしたが、日中間の緊張を高めるような動きはもちろん許されない。
 外国人研究者の分析によると、1965年までの150年間で軍拡をした国が戦争に至った例は82%に達したが、軍拡しなかった国は4%だ。軍拡競争の破滅的な帰結は、歴史が証明している。日本政府は中国との安保対話をはじめ、不断の外交に一層の努力を傾注すべきである。
 一方、中国は周辺地域を脅かすような軍拡路線を直ちにやめるべきだ。世界第2の経済大国にふさわしい振る舞いが求められることは論を待たず、まず国防費の公開を進めなければならない。