<社説>東日本大震災4年 復興を加速すべきだ 原発回帰は「教訓」に反する


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 多くの命を奪い、ふるさとが失われた東日本大震災から11日で4年となった。

 道路の復旧などによって一部では、生活の再建に向けた環境が整いつつある。その一方で岩手、宮城、福島の被災3県では今なお約22万9千人が県内外で避難生活を送り、8万人以上が仮設住宅で暮らす。被災者が望む復興には程遠い状況がいまだ続く。
 政府には復興を加速させ、あらゆる手段を講じて被災者の生活再建、地域の再生を早期に成し遂げることを求めたい。国民も被災者の支援を続けてほしい。

被災者視点の施策を

 警察庁によると、東日本大震災の死者は2月10日現在、岩手、宮城、福島の被災3県で計1万5823人、行方不明者は計2586人に上る。未曽有の被害とその教訓を語り継ぐ必要がある。
 岩手、宮城両県が整備した仮設住宅は計3万6079戸ある。政府が被災自治体を財政支援する5年間の「集中復興期間」が終わる2016年3月末までに解体予定の仮設住宅は約3600戸、全体の約10%にすぎない。
 仮設住宅を長期にわたって使用させることは、それだけ復興が遅れているということである。阪神大震災では、兵庫県が約5年間で全仮設住宅4万8300戸を撤去したのと比べ、遅さが際立つ。
 あの日から4年たち、仮設住宅は老朽化も進む。それでも住まざるを得ない被災者がいることを、私たちは忘れてはいないか。
 被災者支援のために日本赤十字社に寄せられた義援金は震災発生1年間で約3千億円を超えた。だが、14年度は2月20日時点でその100分の1に満たない約29億円に激減している。国民挙げて支援の輪を広げたい。
 被災自治体は「集中復興期間」の延長を強く求めていたが、政府は延長には応じず16~20年度の5年間を「後期復興期間(仮称)」とし、6兆円前後を追加投入する方針である。財源は主に歳出削減や税収の自然増分で賄い、被災自治体の財政力に応じて一部負担も検討する。
 負担を求めることで、被災自治体独自の復興事業に予算が割り当てられない可能性がある。「後期復興期間」も政府予算を充てるべきだ。
 政府は原発事故の被災地以外は発生から10年以内の事業完了を掲げ、「自立に向けた施策」を打ち出すことにしている。「自立」を促すことは当然である。だが「自立」に向けた施策は被災者の視点に立ったものでなければならない。住民の声を反映した街づくりなしに、復興はあり得ない。

国策の責任自覚せよ

 東京電力福島第1原発事故の影響が続く福島県の避難者は約12万人に上る。4年程度では放射線の影響を排除できないということであろう。
 復興庁などが実施した14年度の住民意向調査で、放射線量が高い福島県の帰還困難区域への帰還を望む世帯は双葉町12・3%、大熊町13・3%にとどまっている。帰ることを諦めざるを得ない状況に追い込まれているのである。原発は国策で進められた。その責任を政府は自覚すべきだ。
 ところが政府にはその自覚が決定的に欠けている。世論調査では原発再稼働反対が賛成を上回っている。にもかかわらず昨年4月にエネルギー基本計画を閣議決定し、原発回帰に大きくかじを切ったことが何よりの証しである。
 ドイツのメルケル首相は東京都内での講演で、ドイツが22年までの「脱原発」を決めた理由を「技術水準の高い日本でも予期しない事故が起こり得ると分かったからだ」と述べた。大地震も津波もないドイツだが国民の安全を考え、原発推進から脱原発に転換したのである。
 「フクシマの教訓」をメルケル首相は生かし、安倍政権は何ら学んでいないと言わざるを得ない。未曽有の原発事故の教訓に反する原発回帰は見直すべきだ。