<社説>防衛相発言 対話拒むなら移設撤回せよ

 中谷元・防衛相が米軍普天間飛行場の移設計画をめぐる翁長雄志知事との会談に関し「より対立が深くなるということでは、会っても意味がない」と語った。

 言うことを聞かない限り会わない。そう聞こえる。自治体の代表者に対し、あまりに露骨で傲岸(ごうがん)な物言いだが、本音なのだろう。
 政府は県の中断要請を顧みず、海底ボーリング調査を再開した。辺野古移設に向けた埋め立て工事に「この夏」(中谷氏)にも着手しようと、なりふり構わず作業を急いでいる。
 調査再開に翁長知事は「県民に説明がない中で物事を進めており、許せない」などと語ったが、これを中谷氏は「知事は工事を阻止するということしか言っていない。もう少し沖縄や国の安全保障を考えてほしい」と批判した。
 あまりに一方的で、乱暴な見解だ。批判や異論に向き合おうとしない、安倍政権の体質が表れているが、知事に反論があるなら、なおさら会うのが筋ではないのか。
 翁長知事と会った閣僚は山口俊一沖縄担当相だけだ。菅義偉官房長官は「政府の窓口は山口氏だ。何回となく翁長氏と会談し、考え方は伝わっている」と話したが、知事が山口氏と会ったのは就任後と予算措置へのお礼の2回で、いずれもあいさつ程度だ。普天間問題で協議したわけでもない。
 菅氏は先の国会答弁で、知事側から要請のあった時期は多忙だったとして「会うことはやぶさかではない」と述べていたはずだ。
 民意を背景に移設反対を訴える知事に対し、菅氏らは明確な反論の言葉を持ち合わせていないように見える。会わないのではなく、会えないのではないか。地元を無視して進める事業について堂々と説明できないのなら、撤回すべきであるのは言うまでもない。
 菅氏は前知事の埋め立て承認を根拠に「法治国家であり、法令に基づき粛々と進める」と繰り返すが、公約に反して埋め立てを承認した前知事の判断は選挙で大差で否定された。その結果も無視するようでは「法治」どころか警察国家でしかない。
 政権内では、埋め立て前に沖縄と向き合う姿勢を示す必要があるとして、知事との接触を模索する向きもあるようだが、アリバイ的な会談であれば意味はない。知事と向き合い、地元の声に真摯(しんし)に耳を傾けることが、民主主義国として最低限の対応であるはずだ。