<社説>USJ進出表明 観光の質的転換を急げ


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 沖縄の豊かな自然を生かした大型観光施設の誕生を期待したい。急成長するアジアの活力を取り込み、沖縄の経済自立への歩みを確実にするための礎となるはずだ。

 米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)が沖縄進出を正式表明した。本部町の海洋博記念公園周辺の国有地を活用する方針だ。名護市のネオパーク周辺への展開も引き続き検討する。
 USJ運営会社のグレン・ガンペル最高経営責任者(CEO)は「映画やテレビ番組をテーマにしたパークではない。沖縄の場所に合う物をつくる」と語っている。
 沖縄の自然に着目した施設を目指すものであり、その構想を歓迎したい。美ら海水族館やネオパークとの相乗効果も予想される。沖縄の自然を学び、魅力に触れることができる一大拠点となる。
 USJの沖縄進出はアジアの外国人観光客の急増を踏まえたものであろう。2014年に沖縄を訪れた外国人観光客は前年比62・2%増の89万3500人を数えた。
 経済成長が著しいアジア諸国から訪れる外国人観光客は今後も増加が予想される。USJの施設が実現すれば、観光客誘致の目玉となるであろう。
 USJ進出表明に際して私たちが考えなければならないのは、沖縄観光の質的転換である。沖縄観光に対して繰り返されてきた「量だけではなく質の充実を」という指摘をいま一度確認したい。
 14年の観光客数は初めて700万人台を突破した。行政の観光施策と観光関連業界の努力の成果である。しかし、観光客数のみの追求ではなく、観光客個々の満足度を高める取り組みが必要だ。
 高付加価値を求める観光産業への転換を急ぐべきだ。人数に宿泊日数を掛けた「人泊」を増大させることを目標に据えれば、経済効果を高めることになろう。
 外国人観光客の安心・安全を確保する取り組みも必要だ。県内の飲食店で倒れた香港観光客と十分な意思疎通を図ることができず医療措置が遅れた事例は、今後の観光振興を考える上で、深い反省と教訓を残した。
 自然、歴史、文化の独自性を踏まえた観光振興は沖縄の持続的発展の鍵を握る。それと真っ向から対立する新基地建設を日本政府が強行するのは矛盾も甚だしい。USJ沖縄進出の意義を考え、観光産業の方向性を見定めたい。