<社説>日中安保対話 関係改善に一層の努力を


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 日中両政府は4年ぶりに安全保障上の課題について話し合う「安保対話」を開いた。

 両国は安保分野での交流強化で一致した。自衛隊と中国軍の偶発的衝突を回避するための「海空連絡メカニズム」の運用開始の作業を加速する方針を確認した。
 しかし、軍事力を増強する中国と、日米軍事協力の拡大を目指す安倍政権との相互不信は根深い。両国は力による平和ではなく、相互信頼を通じた平和を目指し、関係改善に一層努力すべきだ。
 日中安保対話は、両国の外務、防衛当局が双方の安全保障政策をめぐり議論を交わし、理解を深める場だ。しかし日本の尖閣国有化に中国が反発し、中断していた。
 2014年版防衛白書は、中国の海洋進出を高圧的だと非難した。東シナ海上空の防空識別圏設定に関し「事態をエスカレートさせ、不測の事態を招きかねない」と懸念を示している。
 中国は15年度の国防費として、前年度実績比10・1%増の8868億9800万元(約17兆円)を計上した。2桁増は5年連続で、李克強首相は15年の政府活動報告で「海洋強国の目標に向けてまい進していく」と強調した。日本は中国の軍事増強に「深刻な懸念」を示している。
 一方、中国は日米軍事協力の拡大を目指す安倍政権の安全保障政策を警戒している。集団的自衛権の行使容認の閣議決定や、武器輸出三原則撤廃、安全保障法制の整備を目指す日本に神経をとがらせている。さらに安倍政権の歴史認識にも警戒している。
 日中が互いに相手国を刺激し続ければ、軍備増強の連鎖を起こす「安全保障のジレンマ」に陥ってしまう。偶発的な衝突を回避するために包括的な危機管理制度の確立が急がれる。
 安倍政権は過去の歴史に真摯(しんし)に向き合うべきだ。かつて日本は、アジア諸国を侵略し植民地支配した。痛切な反省から平和国家として歩んできた。安倍晋三首相は、戦後70年談話で歴代内閣が引き継いだ「植民地支配と侵略への反省」を表明し、中国側の不信感を払拭すべきだ。
 日本にとって中国は最大の貿易相手国である。13年は輸出全体の2割を占め、相互依存関係にあることを忘れてはならない。軍事力ではなく経済や外交を通じた信頼構築こそ望まれる。