<社説>少子化対策大綱 実効性ある施策が大事だ


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 政府が新たな少子化社会対策大綱を決定した。「婚活支援」の後押しや妊娠・出産教育の推進など、踏み込んだ内容が目を引く。

 大綱は少子化対策の指針となるもので、総合的な政策を盛り込んでいる。少子化社会対策基本法に基づき2004年に策定されており、5年をめどに見直される。
 2度目の改定となった今回は少子化に対し「社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的な状況」と指摘した点が大きな特徴だ。保育所整備などの子育て支援が中心だった従来の大綱から一歩踏み出した内容であり、それだけ人口減少への強い危機感が表れているといえよう。
 日本の人口は、出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人に減少すると試算される。人口減少により労働力が不足し、経済成長ほか財政などにも大きな影響を与えると懸念されている。
 こうした背景を踏まえた大綱では、若い男女に出会いの場を提供する自治体の取り組みを支援することなどを初めて盛り込んだ。
 有村治子少子化対策担当相は結婚支援事業に関し「今回のハイライト」と強調したが、既に全国の自治体などが若者に出会いの場を提供する事業などを広く展開している。国の後押しによる具体的な成果が早期に求められよう。
 大綱は、学校での妊娠・出産教育を充実させることも初めて盛り込んだ。妊娠適齢期など妊娠・出産に関する正しい知識を持つ人の割合を現状の34%から70%に引き上げるとの数値目標も掲げた。
 未婚化や晩婚化が少子化の大きな要因になっているとの指摘が背景にあるが、結婚や妊娠、出産は当然、個人の生き方に大きく関わる問題だ。有村担当相は「個人のライフスタイルや価値観を尊重しながら、伝えるべきことは正々堂々と伝えたい」と話しているが、議論を深める必要もあろう。
 大綱は今後5年間を集中取り組み期間と位置付け、妻の出産直後に男性の休暇取得率を80%にすることや、男性の育児休業の取得率を13%にするなどの方針も打ち出した。
 数値目標を掲げて意識を喚起した点は評価できるが、男性の育児参加を大幅に増やすためには職場の理解と協力が不可欠で、労働時間抑制や人事評価の見直しなど課題も多い。企業の取り組みを促す実効性のある施策を求めたい。