<社説>防衛局不服文書 沖縄の痛み感じ県外移設を

 米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり県が出した名護市辺野古海域での作業停止指示について、沖縄防衛局が不服として農水省に申し立てた審査請求書などの内容が明らかになった。県内世論の大多数が辺野古移設に反対していることには触れず「(作業停止は)普天間の返還遅れに直結し、周辺住民が騒音にさらされ続けることになる」とするなど、一方的な主張ばかりが目立つ。

 そもそも国の機関が別の国の機関に行政不服審査法に基づく審査請求や執行停止を申し立てられるのか。同法は第1条で国民に不服申し立ての道を開き「国民の権利利益の救済を図る」ことをうたっている。つまり申し立ての当事者は国民だ。国ではない。
 防衛局は「特権的立場あるいは優越的地位」ではなく「一般私人と同様の立場」で申し立てたと弁明した。防衛省と農水省という政府の身内同士が申立人と審査人の立場になることは疑問だ。「特権的」「優越的」にないと主張するのもあまりに苦しい弁明だ。公正、公平な判断が出る環境が担保されていると誰が思うだろうか。
 防衛局は岩礁破砕を「海域における地殻の隆起形態を変化させる行為」と記し「サンゴ礁にまで発達したとは認められないサンゴ類をき損する行為は規制の対象とならない」と自論を展開している。
 サンゴ礁とはサンゴの群落を指す。コンクリートの下敷きになっていたのは複数のサンゴ類だ。小規模ながらも群落を形成しており、これをサンゴ礁から除外することが果たして妥当なのか。群落でないサンゴ類だとしても、岩礁に含まれないから破砕しても構わないという主張は極めて乱暴だ。
 普天間移設についても名護市辺野古が「唯一の解決策」と記した。中谷元・防衛相は大臣就任前に学生のインタビューに答え、普天間飛行場の県外移設について「理解してくれる自治体があれば移転できる」と断言していた。「唯一」でないことを防衛相自身が認めている。詭弁(きべん)を繰り返すのはもうやめるべきだ。
 意見書を出した翁長雄志知事は辺野古移設を強行する政府について「沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない」と批判した。正しい指摘だ。国がすべきは執行停止や審査請求を申し立てることではない。県民の痛みを受け止め、県外移設を真剣に検討すべきだ。