<社説>南西石油精製中止へ 雇用対策を万全に


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 南西石油が製油所を閉鎖することになった。企業の判断とはいえ、少なくとも従業員の失業だけはあってはならない。

 解雇は避けられない見通しだが、再雇用など何らかの手だてが不可欠だ。同社はもちろん、労働行政なども雇用対策には万全を期してもらいたい。
 南西石油はエッソスタンダード沖縄として1968年に設立された。製油所建設のため埋め立て免許の交付を受け、72年に西原製油所の運転を開始。復帰とともに南西石油へ社名変更し、石油精製を続けてきた。
 だが親会社の東燃ゼネラルが2008年、保有株式をブラジルの国営石油会社ペトロブラスに譲渡した。ペトロブラスはアジア展開の拠点と位置付けていた。
 近年は売上高で県内企業首位を続けてきたが、最近のガソリン需要減退や急激な原油安で採算は悪化していた。西原製油所を閉鎖してこの地での石油精製はやめ、石油製品の備蓄基地にして他社に売却する方針のようだ。
 ペトロブラスは日本での石油事業から撤退の方向とされる。汚職疑惑で親会社の株価が下落し、経営を直撃したことも背景にあるようだ。ブラジルでの疑惑の余波で沖縄の事業所が閉鎖されるのは理不尽との感を禁じ得ない。
 他社に売却するとしても、そこでどんな事業が継続されるのか不透明だ。従業員の再雇用を条件とするなど何らかの対策が必要だろう。同社の従業員数は198人に及ぶ。国や県の労働行政も最優先で対策に当たってほしい。
 雇用面だけではない。エネルギーの安定供給面の対策も重要だ。経済産業省資源エネルギー庁は「沖縄の石油の安定供給に混乱を生じさせてはならない」と指導している。当然だ。ペトロブラスが対策を講じるかきちんと見極め、適切な指導をしてもらいたい。
 石油業界は今、曲がり角にある。石油製品の需要はエコカーの普及や少子化で今後も減少が続く。そこで国は供給力を絞って過当競争を回避させるため、業界に供給能力削減を求め、併せて事業再編も促している。
 南西石油の製油所閉鎖もこの流れと無縁ではない。業界の再編機運が高まるのは必至だ。だが再編の渦に巻き込まれることで、従業員の雇用対策が後回しになってはならない。繰り返すが、労働行政はその存在価値を発揮してほしい。