<社説>出荷10年連続減 泡盛の普遍的価値訴えたい


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 泡盛の普遍的価値を県内外や世界に広く発信していくための、あらゆる「仕掛け」を今こそ推し進めていくことが必要だろう。

 県酒造組合がまとめた泡盛の2014年総出荷量は、前年比3・1%減の2万21キロリットルだった。10年連続で減少している。
 沖縄ブームを背景に消費が拡大したピークの04年に比べ、出荷量は28%減った。全体の8割強を占める県内出荷は04年時の約80%に縮小し、県外出荷は約47%に落ち込んでいる。
 国内の酒類販売は漸減傾向が続いており、減少は泡盛に限ったことではない。若者のアルコール離れや人口減、飲酒機会の減少などさまざまな要因が絡んでいる。
 ただ発泡酒などの安価な酒類の登場をはじめ「焼酎ブーム」「ハイボールブーム」といった言葉に象徴されるように他の酒類との競争で伸び悩んでいることも事実だ。
 観光客が右肩上がりで増える中、県外出荷の減少続きには歯がゆさもあるが、輸送コストがかさむ県外販売では、大手メーカーの焼酎などに価格面で太刀打ちできないといった事情もある。
 県民をはじめ全国の多くの愛飲家に根強い人気を誇っているとはいえ、10年連続減少の現実を直視する必要があろう。このまま市場縮小が続けば、地場産業の一翼を担う泡盛業界の将来さえおぼつかない。「業界として、深刻かつ危機意識を持って受け止めている」(玉那覇美佐子県酒造組合会長)という認識を共有したい。
 もちろん関係者は手をこまねいてきたわけではない。「古酒の郷」事業や表示基準統一の動きに象徴されるような古酒の高付加価値化、若者や女性ら向けのカクテル、炭酸割りといった新たな飲み方の提案などさまざまな需要開拓を図っている。さらに泡盛の良さを広め、定着させるためのインパクトのある取り組みも進めたい。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産登録を目指す動きもある。黒麹(こうじ)菌を使用した世界唯一のお酒である泡盛と琉球独自の食文化は、世界に誇り得るものだろう。広くその価値を訴えたい。
 「どの料理にも違和感がない。特別な酒でなく、多くの人に親しんでもらえる」。旅行で口にした味が忘れられず、東京で泡盛同好会を組織したOLから聞いた言葉だ。泡盛にはまだ私たちが気付いていない魅力や可能性があるはずだ。