<社説>AIIB参加見送り 日本は主体的に判断を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本は中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を見送った。

 麻生太郎財務相は組織運営や融資の審査体制に不安が残る点を理由に挙げている。だが組織運営のルールは参加国の交渉を経て6月末までに合意を目指すことになっている。日本の不安は交渉で解消される可能性があるということだ。
 政府は米国主導の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加の際、交渉入りが遅れれば、他国が作ったルールを受け入れるだけになり、不利になるとしていた。AIIBでも同じことがいえないか。
 にもかかわらず参加しない最大の理由は、中国の影響力拡大を嫌う米国の顔色をうかがっているためだ。実際、安倍晋三首相は参加を当面見送ることで「米国は日本が信頼できる国だと分かっただろう」と述べている。
 対照的に英国、ドイツ、フランス、イタリア、韓国などが米国の横やりをはねのけ参加している。
 対米追従は論外である。日本も主体的に判断すべきだ。その際は国益と併せて、AIIB参加によって日本が新興国に貢献できるか否かも基準にすべきである。
 アジア開発銀行や世界銀行によるインフラ投資は、成長著しいアジアの需要に追い付いていないとの指摘がある。AIIBに東南アジア諸国連合(ASEAN)の全10カ国が名を連ねているのは新たな国際金融機関への期待の表れともいえよう。
 それに加えて米国の影響力を受ける国際通貨基金(IMF)などに対するアジア各国の不信感が参加を後押ししてはいまいか。
 1997年のアジア通貨危機では、IMFが支援と引き換えに過剰な構造改革などを課したため、各国の経済は大きく落ち込んだ。
 AIIBがIMF批判などの受け皿となった可能性もある。米国はそのことを真摯(しんし)に受け止め、中国との主導権争いに固執せず、新興国などの発展に貢献するために何をなすべきかを考えて対応してもらいたい。
 AIIBは中国が最大の出資国として主導権を握ることになる。中国も支援を受けた各国に影響力を発揮することだけを考えてはならない。
 米中両国には世界第1位、2位の経済大国としての責任を自覚して行動してほしい。3位の日本にも同じことがいえる。