<社説>非正規正社員化 国の手厚い支援欠かせない


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 エアー沖縄グループが契約社員214人全員を正社員化し、JAおきなわもパートと嘱託計33人を正規職員に登用した。

 沖縄労働局が県と連携して企業や経済団体へ働き掛けた正社員雇用促進キャンペーン(1~3月)の成果ともいえよう。
 那覇空港で搭乗手続きなどを行うエアー沖縄グループが大規模な正社員化に踏み切った背景には、第2滑走路増設などで将来的に空港業務が拡張されることへの備えがある。
 契約社員で対応する選択肢もあるが、正社員化を選んだことは人材確保という側面だけではなく、社員に対する企業の責任感の表れとして評価したい。
 契約打ち切りなどを心配することなく、安心して仕事に専念できる環境は多くの労働者が望むことである。正社員に身分が変わることで働く意欲もおのずと変わり、生産性が上がることも期待される。
 企業側にもメリットがある。人材を安定的に確保することで、その企業にとって不可欠なノウハウを円滑に継承でき、企業力の向上につながる。
 そのような企業が増えれば、沖縄経済は強固なものとなり、持続的発展が期待されよう。
 多くの企業が正社員化に取り組んでほしいが、事は容易でない。県内は中小零細企業が多く、景気動向もにらみ、正社員化に踏み切れない企業は多い。
 県が昨年実施した県労働環境実態調査にも、そのことが表れている。正社員への切り替え制度のある事業所は45・2%あるが、実際に切り替えを実施した事業所は15・7%にとどまっている。非正規雇用でも仕事ぶりを高く評価される人は多い。正社員化できる企業は積極的に取り組んでほしい。
 調査では昨年8月までの1年間に採用された従業員のうち、非正規社員が80・1%を占めたことも分かった。異常な高さである。
 正社員として就職を希望しても求人が少なく、非正規雇用で働かざるを得ない「雇用のミスマッチ」が調査からはうかがえる。
 「雇用の質」の向上には、正社員化が効果的である。少子化対策としても重要だ。実需がある層に消費を促し、経済を活性化させることにもなる。正社員化の取り組みを前進させるためには、企業努力もさることながら国の手厚い支援が欠かせない。