<社説>辺野古基金創設 新基地阻止の基盤固めよ


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 沖縄の声を国内外に発信するための基盤を確固なものとしたい。新基地建設の阻止を訴える県民に対する国民の共感と連帯を広げる格好の機会ともなるだろう。

 米軍普天間飛行場の県内移設に反対する「沖縄建白書の実現を目指し未来を拓(ひら)く島ぐるみ会議」が、移設反対の民意を発信するため、基金の創設を検討している。全国に寄付を呼び掛ける予定だ。
 辺野古への新基地阻止の運動を財政面で支える意義は極めて大きい。取り組みを評価し、後押ししたい。
 基金創設は作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が本紙連載「ウチナー評論」の中で提唱した。同調する意見も本紙に寄せられ、創設を求める声が広がった。
 戦後70年を迎えた今も過重な基地負担を強いられ、新基地建設が強行されている。しかし、沖縄の現状に対する国民の理解はまだ十分とは言えない。沖縄の発信力の強化が求められている。
 1996年から98年にかけて、県は「沖縄からのメッセージ」事業を全国46都道府県と米国で実施した。基地、平和、文化をキーワードに据えたシンポジウムや講演会は基地重圧の実態を伝える上で一定の効果をもたらした。
 規模や手法を問わず、さまざまな形で沖縄の実情を伝える活動がこれからも必要だ。そのためには財政的な裏付けは欠かせない。
 沖縄の民意を米政府や議会に直接届けるためには積極的なロビー活動も求められる。それにも多大な経費が必要だ。これらの活動を多くの国民の良心で支えたい。
 基金創設に向けた募金活動は国民世論の喚起につながる可能性があることにも注目したい。
 東京都の石原慎太郎元知事が2012年、尖閣諸島の購入を表明し、購入・活用に充てる寄付金を募った。日中関係の悪化につながったが、領土問題で世論を喚起し、14億円もの寄付金が集まった。
 方向性は全く異なるが、新基地建設に反対し、平和と環境を守る基金創設を通じて国民理解の広がりが期待できる。この理解は資金同様、県民にとって得難い財産となるはずだ。
 瀬長亀次郎氏が那覇市長となった時、米軍の圧政から市政を守るため自発的な納税運動が起きた。本土からも物資支援があった。「島ぐるみ闘争」を支えたような県民、国民の良心で基金を創設し、新基地建設を阻止したい。