<社説>イラン核枠組み合意 丁寧な対話重ね最終合意を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 イランと欧米など6カ国は、遠心分離機の削減などウラン濃縮活動の大幅縮小と、欧米や国連による経済制裁の解除を柱とする交渉の枠組みに合意した。今後は6月末の最終合意に向けて細部の詰めの作業を行う。

 2002年に発覚したイランの秘密裏の核開発計画は、解決に向けて、ようやく一定の前進が図られたといえるだろう。
 今回の合意が成立しなければ、イランは引き続きウラン濃縮の能力拡大を図っていった可能性が高い。それを阻止する手段として欧米諸国が軍事的行動を選択する道も予想された。
 「軍事衝突」「戦争」を回避し、長年の懸念に外交解決の道筋を付けたことは、核不拡散上の観点から評価できる。
 だが、合意に関して米国、イランの双方が異なる文書を発表し、既に重要部分の解釈で米国とイランとの間で隔たりが露呈しているのが気になる。
 両国とも批判的な国内勢力を念頭に曖昧な部分を拡大解釈しているとみられ、今後の火種となる恐れもある。米オバマ政権は、イランの台頭を警戒するイスラエルやアラブ諸国の説得も迫られる。最終合意まで交渉は楽観視できないだろう。
 仮に失敗すれば、中東で「核兵器獲得競争」が起きてしまう恐れもある。
 最終合意の成否は、どれだけ実効性のある査察体制を構築できるかが鍵となる。国際原子力機関(IAEA)が全ての核関連施設に定期的に立ち入り、濃縮活動を10~15年にわたり監視するとしたが、秘密活動への対応やイランが聖域化してきた軍事施設への調査権限をどう確保するかなど、不透明さも残る。
 イランの核問題を対話で解決することは、国際社会の共通の利益だ。13年秋の暫定合意から1年半近い交渉を経て枠組み合意にこぎ着けたことで、当事者間に一定の信頼関係が構築されたはずだ。最終合意に向け、あらゆる障害を排除して、丁寧な対話を積み重ね、歴史的なプロセスを完成させてもらいたい。それによって地域に平和と安定がもたらされることを期待したい。
 また、日本は、欧米とイランとの良好な関係を生かすとともに、「被爆国」としての立場から、最終合意に向けて交渉進展に力を尽くすべきだ。