<社説>統一地方選 安保法制を争点にすべきだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 4年に1度の統一地方選の41道府県議選と17政令市議選が3日告示され、来年の参院選や次期衆院選も見据えた統一選の戦いが本格化した。今回の主要な争点は人口減少対策を含む地方の再生策などといわれているが、果たしてそうだろうか。

 政府、与党は自衛隊の海外派遣拡大や集団的自衛権行使を可能とする安全保障法制関連法案の成立、憲法改正、日米防衛協力指針の再改定などを進めている。地方選挙で地域の課題が争点に含まれることは当然だ。一方で日本を戦争ができる国に変貌させようとする重大政策こそ最大の争点にすべきではないか。
 3月下旬の共同通信の世論調査では、安倍政権が最重要課題に位置付ける安保法制を今国会で成立させる方針について反対論が49・8%に上り、賛成論を10ポイント以上上回った。自衛隊の海外派遣についても8割近くが国会の事前承認が必要と答えている。多くの国民が安保法制に慎重な見方だ。戦後70年談話でも植民地支配と侵略へのおわびを盛り込むべきだとする回答が過半数に達した。
 一つ一つの政策課題を見ると、安倍晋三首相の考えに対して国民世論は否定的な意思を示しているともいえる。しかし内閣支持率は55・4%と依然として高い水準を維持している。民意がねじれていると言わざるを得ない。
 地方議員の勢力は各政党などの国政選挙の集票力に影響する。自民党が道府県議選の候補を前回の1244人から約70人増やして擁立しているのもそのためだろう。地方選挙の結果が国政に直結する以上、国全体の問題を争点から外すことがあってはならない。
 また今回告示された41道府県議選は総定数に占める無投票当選の比率が過去最高の21・9%に上った。選挙という洗礼を受けずに501人が新議員に就任することになり、5人に1人以上が有権者の審判を受けていない。有権者が1票を投じる機会を奪う無投票当選の拡大は、民主主義の根幹を揺るがしかねない由々しき事態だ。
 統一地方選の投開票は12日。残された選挙戦では、立候補者は安保法制など国の重要課題について自身の考えを有権者に訴えてほしい。有権者も日本の今後の行方を決める選挙であるとの認識を持ち、候補の公約などを見極めた上で1票を投じてほしい。