<社説>島尻氏発言 移設反対の民意と向き合え


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 市民の側ではなく、権力側に立つ人なのだと再認識させられる。自民党県連の新会長に選出された島尻安伊子参院議員のことだ。

 県連大会での就任のあいさつで、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する市民運動に関し「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治としてここに対峙(たいじ)していく」と言い放った。にわかに信じられない発言だ。
 移設に反対するのが無責任だというが、そもそも自身が2010年の参院選で、普天間飛行場の県外移設を公約して再選されたことを忘れたわけではあるまい。
 島尻氏は県外移設公約を翻し、13年4月に辺野古移設容認を表明した。全ての県関係自民党国会議員が辺野古容認に転じ、その後に仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認するよりも、半年以上早い公約の撤回だった。
 新基地を後世に残したくないと反対運動をする市民に対し、公約を破棄した政治家が「無責任」と批判するのは、筋違いも甚だしい。
 島尻氏は「移設に反対すれば普天間が固定化する」といった政権幹部同様の論理を振りかざしている。辺野古移設反対と普天間の危険性除去は二者択一のテーマではなく、また移設問題の解決策をめぐっては米国でも多様な意見があることは何度も指摘した通りだ。
 仮に島尻氏の立場に立ったとして、昨年の知事選や名護市長選、衆院選などで示された通り、移設反対が世論であることは紛れもない事実だ。政治家であるなら、その民意に耳を傾け、利害を調整するのが最低限の責務ではないのか。
 発言について島尻氏は「言論の自由はあり、反対運動を否定するものではない」と釈明した。だが過去の言動を見ると、今回も本音ではないのかと思わざるを得ない。
 島尻氏は昨年2月の国会質問で辺野古の市民運動に対し「危険な行為に先んじて対策を打つことが必要だ」と述べ、反対運動を弾圧するかのような「対策」を求めた。13年11月には辺野古移設について「待望の子どもが生まれた時にはみんなでお祝い」と述べ、物議を醸した。
 「台所から政治を変える」を掲げて国政進出した島尻氏だが、為政者に忠実であることが政治家だとはき違えてはいないか。民意を無視する政権と歩調を合わせて市民と「対峙」する態度を改め、移設反対の世論と向き合うべきだ。