<社説>原発回帰提言 福島の教訓を忘れるな

 東日本大震災から4年たった今も福島県双葉町など東京電力福島第1原発の周辺地域は帰還困難区域に指定されている。約2万4400人が古里を追われ、避難生活を続ける。福島の人々の願いは「安心して暮らせること」であり、事故から学んだのは「安全に絶対はない」ということだったはずだ。

 避難者の願いとは裏腹に自民党は7日、2030年の電源構成比率として、原発を2割程度含むベースロード電源を6割に高める提言を安倍晋三首相に提出した。太陽光など再生可能エネルギーの比率を20%台半ばに抑え、原発を20%程度確保したいとする経済産業省の考えと一致する。政府・与党が原発回帰を目指しているのは明らかだ。
 大震災以降、日本は原発への依存を見直し、10年度の電源構成比率で29%あった原発は13年度に1%へ低下した。政府のエネルギー基本計画は、原発を「可能な限り低減させる」としている。
 首相も施政方針演説で「長期的に原発依存度を低減させる方針は変わらない。徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進める」と明言した。提言はその言葉にも逆行している。
 そうした国民との約束をほごにし、再び原発依存を深めるのは、競争力を維持するため「安価な電力」を求める産業界の要望と、固定価格買い取り制度見直しで再生エネルギー普及に待ったをかけた政府の見通しの甘さにある。
 経産省の方針とは別に、環境省は送電網整備などの対策を講じれば、30年時点の発電量のうち、最大35%を再生エネルギーで供給可能と試算している。こうした試算を机上の空論と片付けず、政府は発送電分離などエネルギー改革を進めるのが本筋だろう。
 世論も原発再稼働に否定的だ。昨年衆院選時の共同通信社による世論調査では、自民支持層でも再稼働に賛成したのは49%と過半数に満たない。他の政党支持者は反対が上回る。一方で当選者のうち自民の9割、公明の約8割が再稼働に賛成している。民意と政治のねじれは深刻だ。
 ことし3月11日、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「事故の教訓に学ばないなら原子力はやめた方がいい」と推進派にくぎを刺した。福島の教訓を基にすれば、安易な原発回帰は避けるべきだ。政府が力を注ぐべきは、再生エネルギー普及に向けた改革にある。