<社説>ANA貨物路線新設 アジア経済戦略を後押し


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 ANACargo(カーゴ)は、那覇空港を中継拠点(ハブ)とする国際航空貨物事業で、アモイ(中国福建省)-沖縄、マニラ(フィリピン)-沖縄線を10月から新設する。

 翁長雄志知事が重点政策に掲げるアジア経済戦略の柱の一つは物流だ。空の物流拠点として沖縄の優位性を高める上でも、同社のアジアへの路線拡大は重要な意味を持つ。
 アモイとマニラから運ばれてきた貨物を沖縄に集積させることで、物流の稼働率を高めていく。アモイに進出している日系企業から工業製品の日本向け輸出は多い。マニラは今後日系企業の新たな海外展開先として注目されており、航空需要の高まりが新規路線就航の背景にある。
 ANAの沖縄からの貨物便就航地点は国内は成田、羽田、関西、中部の4カ所、海外はソウル、上海、台北、香港、バンコク、青島、シンガポール、アモイ、マニラの9都市で合計13地点となる。16年度も新たに1路線を就航させる予定だという。
 県は那覇空港内に航空機整備施設建設も計画している。入居予定のANAホールディングスは、同施設を運営する新会社を設立し、16年度中に那覇空港で事業開始を予定している。整備会社設立でアジアからの需要も見込まれ、中継拠点としての那覇空港の付加価値が高まるだろう。
 空の物流だけでなく海も具体的な動きが出てきた。那覇港管理組合は台湾の主要港を統括管理する台湾港務と21日、パートナーシップ港の覚書(MOU)を締結する。県内船会社が台湾に航路を開設・延伸する中、物流基盤を強化し、民間ビジネスを後押しする。クルーズ振興でも連携していく。
 翁長知事自身、動き出した。11日から日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪問団に加わり北京を訪問している。中国政府要人や商務部との面談、商工団体と交流する。アジア経済戦略を具体化するため、国際物流拠点の形成、魚介や牛肉、豚肉など食品の輸出促進、観光誘客などで協力を求める。中国とのビジネス促進には政府関係者とのネットワークが鍵を握るといわれる。知事訪中を次のステップにつなげたい。
 アジア市場で地理的優位性がある沖縄の特性を生かし、積極的に施策を展開すべきだ。