<社説>米キューバ首脳会談 歴史的雪解けを歓迎する


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 半世紀ぶりに敵対関係が解消し、歴史的雪解けが確固たるものとなる。世界史に刻まれる米国とキューバの関係改善を歓迎する。

 オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が会談し、国交正常化と双方の大使館再開を急ぐことで一致した。
 両国は昨年12月、国交正常化に向けた協議に踏み出し、米国は独裁国家と名指しして排除していたキューバの米州首脳会議への出席を受け入れ、両首脳の会談が実現した。
 キューバ革命による社会主義政権の誕生後、1961年に断交して以来、初めて会談した両首脳は不毛な対立に終止符を打った。
 2年を切った任期中に外交で成果を挙げたいオバマ氏と、制裁を解除させて経済再建を急ぎたいカストロ氏の思惑が一致した形だ。
 米国とキューバの緊張は沖縄にとっても無縁ではなかった。
 東西冷戦下の1962年に米ソが全面戦争間際まで至ったキューバ危機の際、沖縄の米ミサイル部隊に核攻撃命令が誤って出されたが、現場指揮官の機転で回避された史実も明らかになっている。
 わずか145キロの海を隔てて、戦火を交えかねないほど険悪だった2国の和解は、双方にとっても、中南米諸国、世界にとっても大きな意義がある。
 歴代の米政権は軍事圧力をかけてキューバの孤立化政策を推進したが、中南米諸国の反発を招き、ベネズエラのような反米国家まで出現した。今回の動きは「米国の方が裏庭で孤立していた」(ローズ米大統領補佐官)ことを率直に認め、大国の独善主義の誤りを改める意思を示したともいえよう。
 米ロ中の大国が利権獲得を競う中南米でキューバとの国交正常化を決断できるのであれば、台頭する中国など東アジアににらみを利かせると称した沖縄への新基地建設計画も改められるのでないか。思考停止状態に陥っている日米合意を見直す契機にしてほしい。
 今後、米国は人権尊重や民主化などを求め、キューバへの関与政策を強めるだろう。制裁対象の相手国に変化を促す外交は、民主化したミャンマーや核問題で最終合意が間近なイランで一定の成果を挙げている。
 キューバのテロ支援国家指定の解除も確実である。オバマ大統領は経済制裁解除を含めて難色を示す野党・共和党などの説得に努め、国交正常化を急いでもらいたい。