<社説>日中韓観光相声明 関係改善の土台にしたい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 近隣諸国であっても、当然言葉や文化に違いがある。

 まして、戦争の負の遺産を引きずる当事国同士に加害をめぐる歴史認識にわだかまりが残っているなら、国民が相互理解と相互尊重を深める環境を政治の力で整える必要がある。
 それにはお互いの国を訪ね合う観光を核にした交流が最も有効だ。
 日本、中国、韓国の観光担当相会合で共同声明が発表され、3カ国間の人的交流規模を2020年に約3千万人に引き上げる目標を掲げた。
 14年に2千万人を突破した3カ国の人的交流を東京五輪が開かれる20年に1・5倍に増やす、意欲的取り組みを大いに評価したい。
 歴史認識をめぐり、中韓両国は日本への不信感を募らせ、関係が悪化してきた。中韓首脳は会談を重ねているが、日中、日韓の首脳会談は長く実現していない。
 過去に6回開かれた観光相会合がほぼ4年間開かれなかったことも、この間のとげとげしい日中、日韓関係を象徴している。
 声明は「東アジアの平和的な経済社会の発展に向け、3カ国の連携が一層重要だ」とうたった。
 具体的には航空路線やクルーズ船の就航を増やしたり、国内交通網や通信環境の整備を加速する計画だ。さらに生活習慣の違いから起きるトラブル防止も掲げた。ネット上で旅行客のマナーに反する行動が取り上げられ、相互の反感をあおる言説が振りまかれる風潮に歯止めをかける狙いもあろう。
 あつれきがある近隣国を訪れ、相互理解を深めて友好関係を再構築することは、観光が持つ本来的な力である。韓国の金鍾徳(キムジョンドク)文化体育観光相が「政治の和解にプラスに働く」と述べた通り、3カ国は観光を核にした人的交流を着実に活発化させ、政治に左右されない友好関係を築く土台にしてほしい。
 とりわけ、日本は中韓との関係改善を積極的に推し進めるべきだ。
 中韓などからの観光客が増え、昨年の外国人観光客が過去最多の89万人を記録した沖縄も交流拡大の一翼を積極的に担いたい。中国語や韓国語ができる観光スタッフの増員やクルーズ船の一層の呼び込みなどに努め、受け入れ体制を整えたい。
 共同声明と符節を合わせるように訪中している翁長雄志知事は歴史的な友好関係や沖縄の魅力をトップセールスし、中国人観光客を増やすメッセージを発してほしい。