<社説>株価2万円台 「官製相場」は危険過ぎる


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 またぞろバブルの失敗を繰り返すのではないか。今回のそれは景気後退を招くだけでなく、私たちの老後も失うことになりかねない。

 東京株式市場の日経平均株価が一時2万円の大台に乗った。
 株価が下がるより上がった方がいいのは自明のことだ。しかし資産の膨張は、膨らむ過程で恩恵を受けるのは一部の富裕層だが、バブルが破裂すれば国民生活が広く破壊的な打撃を被る。甘利明経済再生担当相は「ミニバブルは歓迎」と述べたが、浮かれるばかりでいいのか。
 この相場は注意すべき要素が多過ぎる。確かに企業業績改善の期待もあるが、実態は人為的な「官製相場」の様相が色濃くある。
 最大の要因は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株への投資を拡大したことだ。昨秋、国内株の割合を倍の25%に引き上げた。GPIFは130兆円もの資産を持つ。これで20兆円もの巨額が昨年、株式市場に流入した。
 積極運用で年金財源を確保すると言えば聞こえは良いが、要は株価を高め、アベノミクスの成果と強調し、内閣支持率を高めたいのであろう。国民の老後の資産が政権の支持率対策に充てられた形だ。
 これに公務員共済も追随した。日銀の資金の一部も株の投資信託に回った。日銀の資金の大部分は国債に向かったが、それも株高の一因だ。大幅緩和で日銀が発行国債の9割を買い占めたため、金融機関や機関投資家の資金は株に流れざるを得なかったからだ。「官製相場」と称するゆえんである。
 海外の資金が流入したのも大きい。欧州中央銀行が量的緩和をし、中国やインドも金融緩和に踏み切った。この資金が東京に流れた。前述の通り政治的思惑で巨額の政府関係資金投入を続けているのだから、いわば日本政府が株価の下支え役だ。支持率目当てだから簡単に下支えをやめるはずもない。そう見切られ、外国人投資家は安心して日本株に投資できたのである。
 株は上がりもすれば下がりもする。だが今の相場は「ばば」を引く人が初めから決まった上で、トランプの「ばば抜き」をするようなものだ。
 米国は早ければ6月にも利上げするとされる。緩和から引き締めに転じれば、海外マネーはあっという間に流出しよう。年金積立金をリスクにさらすのは危険過ぎる。むしろ政府は相場の局面転換を最大限に警戒すべきであろう。