<社説>児・老・障施設統合 地域住民の支え合い拠点に


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 厚生労働省は、過疎化が進む地方で高齢者介護や児童、障がい者向け施設の統合を進める検討チームを月内に発足させる。統合ありきではなく、地域住民のニーズに沿った支え合いの拠点づくりを柱に据えることを求めたい。

 福祉関係施設の統合を進める背景には介護、保育分野での人手不足がある。
 団塊の世代が全て75歳以上となる2025年には、介護職員は約30万人不足し、保育需要がピークを迎える17年度末までに新たに約6万9千人の保育士が必要と推計されている。
 その影響を最も受けるのは過疎地である。福祉サービスの提供が困難となれば、さらなる人口流出を招く可能性がある。過疎化の歯止め策の一つとして施設を統合せざるを得ない事情がある。
 一方で子どもや高齢者、障がい者が一緒に施設を利用し、交流することのメリットは大きい。
 子どもたちは触れ合いを通して敬老精神が培われ、障がい者への理解も深まろう。高齢者は生き生きとし、障がい者は社会参加への意欲が高まることが期待される。
 実際、厚労省が参考にする「富山型デイサービス」では、高齢者施設から移ったお年寄りが子どもと会話し、世話することで笑顔を取り戻したという。
 1993年に始まった「富山型」は民家などを改修した小規模施設で家庭的な雰囲気の中、子どもや高齢者、障がい者が過ごす。触れ合い重視が成功の要因といえよう。
 厚労省は2009年度から3年間、高齢者の介護や子どもの保育を手掛ける福祉拠点「フレキシブル支援センター」事業を実施した。福祉関係施設の統合はその延長線上にある。
 高知県は同事業で「あったかふれあいセンター」の整備を進め、12年度からは県単独事業として取り組んでいる。
 センターは約40カ所に増え、多世代間の交流のほか、障がい者の就労支援や買い物援助などを行い、地域の福祉拠点として実績を上げている。
 検討チームでは限られた人材を活用するため、保育士が介護福祉士資格を取得する際には試験科目の一部免除を検討するという。垣根を低くしてもサービス低下を招かないよう留意が必要だ。
 併せて福祉行政の縦割りを解消し、共生型福祉施設に合った柔軟な補助金制度創設も検討すべきだ。