<社説>再稼働差し止め 脱原発の世論と向き合え


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 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、福井地裁が再稼働を差し止める仮処分決定を出した。再稼働の動きに司法がブレーキをかけた画期的な判断と言えよう。

 3、4号機をめぐり安全対策が不十分として、周辺住民らが再稼働差し止めを求め仮処分を申し立てていた。仮処分で原発の運転を禁止する決定は全国で初めてだ。
 決定はすぐに効力を持つ。関電は不服を申し立てる方針だが、主張が認められない限り再稼働はできない。
 再稼働に関しては昨年5月に福井地裁が関電大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた。だが関電は判決を不服として控訴し、その結論を待たずに再稼働に向けた作業を進めていた経緯がある。
 住民側が今回、再稼働の動きをすぐに止めようと仮処分を求めたのは、昨年5月の判決を事実上無視した関電の姿勢が背景にある。
 関電は仮処分決定に対して「当社の主張を理解いただけず誠に遺憾。到底承服できない」とコメントして仮処分の取り消しを求めたが、関電は今回の決定や再稼働に反対する国民世論と今こそ真摯(しんし)に向き合うべきだ。
 仮処分では重大事故の発生可能性などが争点だった。住民側は、関電が想定する基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を超える地震で、放射性物質が飛散する過酷事故に陥ると主張した。
 関電側は「十分な安全対策を講じている」と反論した。だが樋口英明裁判長は、全国の原発で過去10年足らずの間に5回、電力会社の想定を超える地震があったと指摘し「基準地震動を超える地震が到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにすぎない」と批判した。極めて妥当だろう。
 東京電力福島第1原発事故からわれわれが学んだことは「安全に絶対はない」という教訓だったはずだ。ところが安倍政権や電力会社は4年前の過酷事故を忘れたかのように再稼働に前のめりになっている。
 政府、自民党はエネルギー政策の焦点である2030年の電源構成比率で、原発について約2割を確保するなど原発回帰路線を鮮明にしているが、今回の決定は、なし崩し的な再稼働の動きに、司法が強い警告を発したものだ。
 脱原発を求める世論と向き合い、エネルギー政策の議論を根本からやり直す契機とすべきである。