<社説>テロ指定解除 負の遺産越え国交正常化を


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 オバマ米大統領はキューバに対するテロ支援国家指定解除を決定し、議会に通告した。

 キューバ革命後に断交し半世紀以上対立を続けてきた両国は、関係正常化に向け前進した。軍事力に頼るのではなく、外交による問題解決を訴えるオバマ氏の政治姿勢を歓迎したい。
 米国は長年、中南米を「裏庭」扱いしてきた。オバマ氏は「米国建国の礎である(自由などの)理念を順守してこなかった」と語るなど対中南米政策に問題があったことを認めている。
 1959年のキューバ革命で親米政権が倒れた後、米国は中南米に社会主義政権が広がるのを阻止するため、政治、軍事両面で各国に介入し右派勢力を支援した。しかし、敵視政策の反動から、99年にベネズエラで反米左翼のチャベス大統領、2003年にはブラジルで穏健左派のルラ大統領が政権を握るなど、周辺でも左派政権が誕生した。
 確かにキューバには、反体制派への弾圧や表現・集会の制約など、民主主義や人権をめぐる懸念材料がある。それでもオバマ氏は、ブッシュ政権のような対決型ではなく、対話を重視する姿勢に転換した。そもそもキューバは米国にとって重大な脅威ではない。オバマ氏の政策転換は、米国のキューバ敵視政策が中南米諸国との関係に悪影響を及ぼすのを憂慮したからだろう。
 米国の硬直した敵視政策の見直しは、日本政府も見習うべきだ。島しょ防衛と称して南西諸島の軍事化にまい進し、辺野古の新基地建設に前のめりな姿勢を続けるだけでは、東アジアの平和と安定は得られない。
 一方、キューバと沖縄は移民で結ばれている。本部町、糸満市、名護市、うるま市(与那城、具志川、石川)、北中城村、玉城村から移民し、サトウキビ耕作、漁業に従事した。
 経済制裁が解除され、外国からの投資が盛んになれば経済復興が期待できる。沖縄も観光交流などを通じて、結び付きを深めるきっかけになるのではないか。
 中南米地域に残る負の遺産を乗り越えるために、オバマ氏は議会を含めた国内世論をまとめなければならない。キューバも人権問題などの解決に取り組まなければならない。双方が知恵を出し合い、国交正常化にこぎ着け、中南米の平和と安定につなげたい。