<社説>ブラック求人拒否 若者の「使い捨て」許さない


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 残業代を支払わない違法な長時間労働や、暴言を浴びせるといったパワーハラスメントを恒常的に行い、若者を退職や精神疾患に追い込むブラック企業対策は、社会全体の喫緊の課題だ。

 ブラック企業の新卒求人の受理をハローワークが拒否できる制度の創設などを盛り込んだ青少年雇用促進法案が、今国会中に成立する見通しだ。
 厚生労働省は2014年度、若者の使い捨てが疑われる事業所4561カ所を重点監督し、83・6%に当たる3811カ所に違法行為があったとして是正勧告。沖縄労働局の重点監督(同年11月)でも、対象50事業所のうち84%に相当する42事業所で労働基準関係法令違反が確認されている。
 企業の「若者使い捨て」を許してはならない。公的窓口での規制強化は、一定の効果が期待できよう。ブラック企業根絶に向け一歩前進だ。今後も悪質な企業に対し、社会全体で包囲網を狭めていく必要がある。
 法案には課題もある。拒否制度は違法行為を繰り返した「事業所」が対象で、同じ企業でも別事業所なら新卒求人を出せる。また、民間の職業紹介事業者は制度対象外のため、ブラック企業はハローワーク以外から人材確保が可能だ。
 法案のもう一つの柱に、離職率など職場情報の提供を企業に義務付ける制度がある。ただ、就職を希望する学生から求めがあった場合を前提とし、企業側が離職率や有給休暇取得状況などの中から、提供する情報を選べるため、学生が希望していた情報が提供されるとは限らない。問題だ。
 これでは、企業側に配慮し過ぎだと批判されても仕方ない。若者が正しい情報の下で就職先を選択できるよう、求人の段階で離職率など、厚労省が想定する全ての情報を開示すべきだ。
 企業は、社員の仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を図り、高収益と両立させることが求められる。社員一人一人が自己研鑽(けんさん)や家族、友人らとの時間を充実させ、将来に希望を持って働ける会社にしなければならない。
 社員の多様な生き方を受け入れることで、仕事の効率化を高め、企業業績にもプラスに働く仕組みづくりが求められている。また、政府は行き過ぎた利益至上主義の犠牲者根絶に向け、より実効性のある制度の創設を進めるべきだ。