<社説>特定秘密と国会 監視機能強化し実効性を


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 行き過ぎた秘密主義に歯止めをかけ、国民の「知る権利」を守る役割を担う国会の監視機関が、秘密主義そのものの運営をすることに理解は得られるのか。

 特定秘密保護法は政府の意のままに秘密が指定される懸念が拭えない。外部から秘密指定や解除が適切に行われているかをチェックする衆参両院の情報監視審査会が動きだした。
 あいまいな秘密指定の基準の下、やみくもに秘密指定が膨れ上がる事態を防ぐため、いくつもの監視機関が設けられている。だが、国会の審査会以外は政府の内部組織ばかりだ。官僚同士のもたれ合いの中で秘密の内実を厳しい目で審査できるか、疑問が尽きない。
 だからこそ、唯一の独立機関と位置付けられる国会の審査会の役割は極めて重い。しかし、その権限はないない尽くしなのである。大幅な権限の拡充がなければ、実効性は担保できまい。
 情報監視審査会は政府から年1回特定秘密保護法の運用状況の報告を受け、必要に応じ特定秘密の提出を求める。行き過ぎがあれば、秘密指定解除を勧告できる。
 しかし、提出や解除の勧告に強制力はなく、政府はそれを拒める。不当な秘密指定を内部通報する窓口の設置さえめどが立っていない。政府側は担当閣僚の権限で聞き置く程度にとどめ、恣意(しい)的な秘密保持を公然と続けるだろう。
 国政調査権の侵害に等しい状態なのに、今後は審査会の日時、場所も非公開とされ、国民が審査会の活動を把握できるのは年1度の報告書だけとなる。自発的な機能不全と皮肉りたくもなる。
 審査会の構成も問題だ。衆参両院とも8人ずつだが、安倍政権に異を唱える是正勧告に消極的な与党が衆院で6人、参院で5人と過半数を占めている。
 国会は2014年12月の特定秘密保護法施行から間を置かず、審査会を設けるべきだった。始動が遅れた間に驚くべき数の文書が秘密指定されそうな雲行きだ。
 政府が明らかにした特定秘密を記録した文書数は、昨年12月末時点で約18万9193点に上る。沖縄の基地問題の情報を保有する防衛省が最多の6万173点、外務省は3万5783点で両省が半数以上を占める。
 施行された特定秘密保護法の廃止が望めない以上、秘密主義の横行に歯止めをかける国会審査会の権限強化が不可欠である。