<社説>不承認で工事停止 国は辺野古移設諦めよ


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、沖縄防衛局が工事の設計変更を申請し、県が不承認とした場合、工事を停止しなければならないとの見解を国土交通省が示した。

 防衛省は今後、設計変更を申請する可能性を示しているが、翁長雄志知事は辺野古移設を「あらゆる手法を駆使して」阻止すると表明している。県が承認する可能性は低いとみるのが自然だ。この際、国は辺野古移設を断念し、県外・国外移設を真剣に考えたらどうか。
 菅義偉官房長官はことし3月に海底ボーリング調査を再開した時に「埋め立て承認を得ている。法治国家として粛々と行っていくのは当然だ」と述べた。その「承認」が設計変更を出した時点で「不承認」となる可能性がある。その時、国は法治国家として工事を中止するのが筋だ。
 ただし当初の設計を変えなければ工事は継続できる。しかし防衛省は米軍岩国基地の滑走路沖合移設事業でも8回の変更申請を出しており、埋め立て工事で設計変更は不可避のようだ。実際に防衛省は国会の場で辺野古移設について「工法への変更、環境保全の観点などから変更を申請することはあり得る」と説明している。
 設計変更を申請し、不承認となれば工事を停止するほかない。不完全な設計のまま工事を継続するような愚行を国がするはずもない。
 しかし「不承認ならば工事停止」の見解を示した国交省の池内幸司水管理・国土保全局長はこんな見解も述べている。
 「埋立法のさまざまな承認や許可があるが、そういうことが行政不服審査請求の対象になることはあり得る」。つまり知事が不承認としたら、防衛省が行政不服審査請求を出す可能性を示しているのだ。
 知事の作業停止指示に対抗して防衛省が不服審査請求と執行停止申立書を提出し、農水省が知事の指示の効力停止を決めた。国は不承認でも再び同じことを繰り返すのか。
 「国民の権利利益の救済」を目的とした行政不服審査法を使い、国が県の権限を奪うことは法治国家の姿とはいえない。翁長知事は安倍晋三首相に圧倒的な民意を背景に「私は絶対に辺野古への新基地を造らせない」と宣言した。日本が民主主義国家なら、辺野古移設は諦めるべきだ。