<社説>軍港移設受け入れ 松本市長は信を問うべきだ


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 沖縄社会にとって、米軍基地の新たな負担を受け入れるか否かは極めて重大な問題だ。名護市辺野古への新基地建設問題が沖縄の尊厳を懸けた重大局面を迎える中、選挙公約が一層重みを増している。

 有権者にとって、首長選挙の重大な判断材料となる基地受け入れノーの公約を覆すのなら、残された道は一つしかあるまい。選挙で市民に信を問うことだ。
 松本哲治浦添市長は米陸軍の那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設計画を受け入れることを正式に表明した。
 2013年2月の市長選の公約で松本氏は「受け入れ反対、移設なき返還を求める」と述べ、移設反対の立場を鮮明にしていた。
 会見で松本市長は「浦添市の持続的発展のため、受忍すべきと決断した」と強調した。公約違反との指摘に対し、「公約は一度掲げたら最後までどんな状況の変化があっても変えてはいけないものではない」と釈明している。
 市民への説明を尽くすとして、松本氏は辞職しない構えだ。
 政治家にとって公約は命に等しい。軍港受け入れ反対は、党派的基盤を持っていなかった松本氏が他の2候補との対立軸とし、初当選を果たす原動力になった政策だ。
 普天間飛行場の代わりの新基地建設をめぐり、自民党の県選出国会議員5氏、当時の仲井真弘多知事が「県外移設」を破棄して、県内移設推進に転換した。重大な公約違反として県民の怒りをかき立てたことは記憶に新しい。
 昨年秋以降の県知事選、衆院選の沖縄4選挙区で公約違反の批判を浴びた候補者は全敗の憂き目に遭った。
 松本氏は市長選の際、普天間飛行場の県外移設を主張したが、それも13年12月に覆した。2度目の公約違反は市民だけでなく、県民の政治不信を招く可能性さえある。
 浦添市は西海岸開発の市独自案を国、県、那覇市に提案し、浦添移設を前提とした日米特別行動委員会(SACO)合意を踏まえ、軍港移設予定地の変更を求める方針だ。
 1974年に那覇軍港返還が決まってから41年がたつ。米軍が2003年から寄港数を発表しないのは遊休化している証左だ。移設なき返還こそが県益、那覇、浦添の市益にかなうのではないか。
 翁長雄志知事、城間幹子那覇市長は松本市長と協議し、軍港移設の必要性を根本から議論すべきだ。