<社説>育児休業取得 里親にも認めるべきだ


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 全国里親会が改正を求めている育児・介護休業法を、厚生労働省が見直しを視野に検討する姿勢を見せている。

 育休取得は「法律上の親子」の場合にしか認められていない。憲法が保障する「法の下の平等」からして、里親など事実上の親も認められてしかるべきである。
 子どもを養育する労働者を支援し、退職に追い込まれることなく子育てができることを育児休業制度は保障している。その結果として、子どもたちに良好な成育環境を保障することにもなる。
 育休取得を里親らに認めないことは、里親らが不利益を被るだけでなく、養育されている子どもたちの「育てられる権利」を侵害することにほかならない。
 虐待や親の精神疾患、死亡、行方不明などの理由で、親元などで暮らせない子どもは2014年3月末現在、全国に約4万6千人いる。
 里親は行き場を失った子どもを引き取り育てている。誰にでもできることではない。社会的に大きな役割を担う里親にも育休取得を認めることで後押ししたい。
 国連の「子どもの権利委員会」は施設中心の養育環境を是正するよう勧告しているが、国がまとめた里親などへの委託率は15・6%にとどまっている。オーストラリア93・5%、米国77・0%、韓国43・6%などと比べ、日本の委託率は極端に低い状況にある。
 里親になるには実親の同意が必要なことだけでなく、里親に育休取得が認められていないことも委託率の低さに影響していよう。
 全国里親会は「里親になることを希望しながら経済的な不安などで、里親登録を断念した夫婦の掘り起こしが可能となる」と指摘している。里親にも育休取得を認めることで委託率の向上が期待されるのである。
 三重県は2月、6歳未満の子を実子として引き取る特別養子縁組制度を利用する県職員に、試験養育期間(6カ月以上)の育休を独自に認めている。
 全国里親会が里親と併せて厚労省に要望した事項を自治体独自で実施していることは、全国里親会の要望実現が社会的にも必要なことだということを証明したといえるだろう。
 全国里親会の要望を全面的に取り入れた法改正を望みたい。