<社説>知事台湾訪問 沖縄との絆を深めたい


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 知事訪問を機に台湾との交流や連携の強化を着実に図りたい。

 台湾を訪れていた翁長雄志知事が、現地企業の台湾港務と那覇港管理組合(管理者・翁長知事)とのパートナーシップ港の覚書(MOU)を締結した。
 台湾港務は台湾政府の全額出資企業で、台湾の主要港を管理運営している。覚書の締結で、台湾に航路を開く県内船会社の荷物積み替え作業などの簡素化が図られ、貨物量増加につながることが期待される。
 台湾側には那覇と台湾の港湾ハブ(拠点)化が推進されることで、日本や中国との貿易が促進されることへの期待がある。着実に成果を挙げてもらいたい。
 訪台で翁長知事は、現地の上場会社など約100社の企業グループ「三三会」の江丙坤会長らと意見交換したほか、日本の経済産業省に当たる台湾経済部で沈栄津常務次長(副大臣)とも会談した。
 沈氏は「沖縄は地理的優位性がある」などと述べ、情報通信分野などでの連携に期待した。情報産業集積を図る沖縄の関係者との間で、ぜひ連携モデルを具体化させるための議論を加速してほしい。
 知事は台湾の対日交流窓口である亜東関係協会など関係機関も相次いで訪問した。関係者からは、県が策定を進めるアジア経済戦略構想に関心が寄せられ、沖縄との「ウィンウィン(相互利益)」の関係構築に期待が示された。
 翁長県政はアジア経済戦略構想の早期具体化とともに、構想に基づく各施策の狙いを効果的に発信していくことが求められよう。
 台湾との交流活性化で大きく期待されるのは観光面の効果だ。2014年度に沖縄を訪れた外国人観光客数は過去最多の98万6千人となり、うち最も多い台湾は36万人余りで、同じく過去最多だった。
 台湾を経由した航空網拡充や増便の取り組みが待たれる。一方で台湾関係者からは、那覇空港国際線ターミルの拡充やホテルの客室確保などの要望がある。早期の行動が必要だ。
 翁長知事は今月中旬には日本国際貿易促進協会の訪問団の一員として中国を訪問し、安里昌利県経営者協会会長らと共に経済交流や航空路線拡大などを働き掛けた。
 アジア経済戦略構想の策定を前に中国や台湾を相次いで訪問した意義は大きい。沖縄との絆をさらに深め、中国や台湾の経済成長を沖縄の発展に確実につなげたい。