<社説>ドローン規制 国民の知る権利を念頭に


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 首相官邸屋上で小型無人機「ドローン」が発見されたことを受け、菅義偉官房長官は重要施設上空の無人機飛行を制限する法規制を今国会中に検討する考えを示した。

 ドローンを悪用させないためにはある程度の規制も必要だろう。だが過度な規制は国民の知る権利に影響を及ぼす。検討に際してはそのことを十分に念頭に置く必要がある。
 例えば、名護市辺野古沿岸部の新基地建設予定地でのドローン飛行を禁止するような規制はあってはならない。国民の知る権利、報道の自由を侵害しないよう最低限の規制にとどめるべきである。
 ドローンに個別の製造番号を付している製造企業もあるが、所有者の特定につながる購入時の登録制は有効だろう。一定程度の犯罪抑止効果が期待できるほか、所有者にとっても行方不明となったドローンが発見された場合、迅速に戻る利点がある。
 今回の事件は首相官邸屋上に飛ばした人物に問題があるのであって、ドローン自体にあるのではない。ドローンは正しく使えば、社会に役立つ。
 人の立ち入りが難しい災害現場で的確な情報を得るために活用されている。東京電力福島第1原発周辺での放射線測定や、昨年9月に噴火した御嶽山(長野、岐阜県)火口周辺調査でも使われた。
 搭載したカメラでこれまでにない映像を撮影できるため、報道各社でも導入が進んでいる。
 価格は数千円からと安価なことから一般にも普及している。業界団体によると、国内に約2万機あるとみられる。
 普及が進む一方で、事故も起きている。名古屋市の繁華街で昨年4月に夜景を空撮中に墜落したほか、神奈川県では昨年11月、マラソン大会の空撮中に墜落し、下にいた人がけがをした。琉球新報社のドローンもことし1月、制御不能で行方不明となっている。
 繁華街では飛ばさないなどのルール作りが必要だ。制御不能に陥らないなど、性能向上を製造企業には求めたい。
 総務省はドローン向けの新たな周波数帯域を割り当てる方針である。操縦に影響する混信を避けるためにも作業を急ぎたい。
 首相官邸屋上は警察官による日常的な巡回対象ではなかったという。上空からの侵入に打つ手がないのが現状だ。危機管理体制を見直す必要もあるだろう。